研究課題
本研究の問題関心は「日本のクリスチャンは人口の1%前後しかいないのにキリスト教主義学校が人気を誇るのか」というものである。2018年度はプレ調査として質的調査を繰り返し、量的調査の問いを明確化した。19年度はウェブモニター調査を実施した。その調査中にコロナ禍となり20年度、21年度RAを使って集計に努めたが進捗は芳しくなかった。22年度、19年度の調査の論文を脱稿したが、長大で通常の学会では引き受け困難ゆえJapan Institutional Gatewayに投稿し、23年度に掲載された。19年調査で主要な設問とキリスト教主義学校関与度とのクロス集計結果から、基本的にキリスト教主義学校に通った者の方が、トリプルな信仰に肯定的であることが分かった。このトリプルな信仰とは井上章一ら『ミッションスクールになぜ美人が多いのか』(2018)で、日本人の多くは本来、洗礼というプロセスを要さなければキリスト教徒であり、仏教徒でもあり、shintoistでもあるという主張である。井上らが文献調査のみで述べたことを我々は意識調査で実証した。ただ井上や佐藤八寿子『ミッション・スクール』(2006)にある階層再生産の問題は検出されなかった。よって19年度の調査は15~29歳の若年層対象であったので、22年度は40~59歳の中堅層対象で、ほぼ19年と同一質問で調査をし、集計途中だが今のところ19年度調査同様の結果である。よって23年度にカトリック女子中高出身者、プロテスタント女子中高出身者それぞれ数名にグループインタビューを行った。前者については現在英文査読誌への投稿準備中である。先行研究の佐藤(2006)、井上(2018)共に玉の輿に乗るという意味での階層再生産を強調していたが、むしろ自らの力でのしあげる、文化資本の獲得と良い階層の獲得の方が考えられるのではないかという視点で考察する。
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