LGBT等のセクシュアル・マイノリティにおける(1)高齢期の施設ケアでの課題と、(2)当事者の抱える将来の老後不安について明らかとするため、2022年度はこれまでの予備調査に基づいて作成した質問紙を使用し、医療・福祉領域の実務者400名(看護師、介護従事者)、一般成人200名に対して、LGBT等の当事者に関して抱くイメージの現状や医療・福祉領域での接触状況に関する調査を行った。また、LGBT等に関する知識尺度についても医療・福祉領域の実務者400名、一般成人200名に対して調査を実施することができた。くわえて、当事者が抱える老後に対する不安や意識について、昨年度から継続して調査を実施し、年代別・セクシュアリティ別に6名のインタビュー調査をオンラインで実施することができた。そのほか、新型コロナウイルス感染症の影響で断念していた先進的な海外での実地調査として、米国(ワシントンDC、フィラデルフィア)へのフィールドワークを実施することができた。以上の調査実施により、当初予定していたすべての調査を終えることができた。現在、集められたデータに関する解析作業を進めており、その暫定的な成果として、①「LGBT」という用語に関する認知度は看護師・介護従事者ともに8割以上であったこと、②一方で看護師・介護従事者ともに「研修」により情報を得た経験はおよそ1割程度と低いこと、③当事者と出会ったことがある看護師のうち4割は自身の臨床で出会っていたが、介護従事者の場合は1割程度であったこと等の実情が示された。また、当事者の将来の老後不安に関しても、経済や住居等の根本的な課題のほか、同性婚ができないためパートナーとの婚姻関係がないことや、周囲に参考となるロールモデルがいないこと、偏見や差別なく在宅や施設でケアを受けられるかといった不安を抱えていることが示された。
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