研究課題/領域番号 |
18K18606
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
藤田 徹 岩手県立大学, 社会福祉学部, 教授 (80238576)
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研究分担者 |
泉 啓 岩手県立大学, 社会福祉学部, 講師 (20646426)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 社会福祉士 / 養成教育 / エスノメソドロジー / 質的記述 / 演習授業 |
研究実績の概要 |
本研究費助成期間(3年)の初年度(平成30年度)として、テーマである「社会福祉士養成教育」と「エスノメソドロジー」の教育的導入に関する理論的な整理を中心に取り組んだ。特に、社会福祉士養成教育へのエスノメソドロジーの寄与可能性を考えるべく、二種類の先行研究の収集及び内容検討を行った。第一は、保健医療分野のエスノメソドロジー研究である。エスノメソドロジーではこれまで様々な臨床現場が分析対象となってきたが、とりわけ医師・患者関係の研究や多職種連携の研究など医療現場を扱ったものは著作に事欠かない。P.テンハブやD.メイナード、わが国でも樫田美雄や岡田光弘をはじめとして多くの研究者による蓄積があり、これらの研究動向について検討してきた。こうしたなかでも特に本研究にとって参考となるのは、エスノメソドロジストが医療現場を分析対象とするだけでなく、そこで得た知見を元に現場の人材教育に関与している研究である。医療場面のロールプレイを医学生、看護学生に対し実施し、それをビデオにおさめて学生自身に分析させるという近年の樫田らの取り組みは、その代表的なものである。こうしたエスノメソドロジーと人材教育の関わりについては、次年度早期に国内外の取り組みをまとめた上で、レビュー論文を執筆する予定である。第二に収集、検討してきたのは、看護教育や保育教育では既に一般化している質的記述の研究法である。学生が相互行為場面を分析する上では、これら既存の方法の導入が考えられる。質的記述は社会福祉士養成教育でも活用され始めているが、まだまだ事例は少なく、これまで取り組まれた内容を踏まえて、次年度はエスノメソドロジーの方法をより重視して、社会福祉士養成課程の演習授業内で使用を計画している。また、その取り組みに対する分析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のテーマに関する理論的な整理を踏まえて、今年度は、その方法の実践と分析を中心に置きたい。理論的な整理については、今年度の研究活動を進めていく上で、ある程度の方向性を描けるところまでまとめることができた。これらの内容を枠組みとして、実際の社会福祉士養成における演習授業を中心とした実践と分析を今年度はテーマとして取り組みたい。また、最終年度は、養成教育におけるエスノメソドロジー導入の効果を、改めて、現場の社会福祉士の経験における現状と課題を聞き取りにおいて確認し、養成教育と実践との連関を確認していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者およ研究分担者が所属する勤務校における社会福祉士養成教育の演習授業において、エスノメソドロジーの知見と方法を導入することにより、それらの養成教育における効果と課題の見極めを図りたい。特に、演習における質的記述の取り組みを、現場で求められる社会福祉士の専門能力と関連付け、それを習得することを意図した内容として実践し、その成果を質的分析により、明らかとしていく。 それを進める上で、課題となりうる点として、研究者それぞれの演習授業の取り組みの前提と方法が一致した形で遂行することをいかに担保していくのか、それを実行することの難しさにあるように思う。そのためには、研究者相互の共通認識と方法の詳細な一致を確認しながら進めることが重要であり、今後、そのための相互確認の機会を頻繁に持つことを実行していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度において、理論研究を中心に活動を進めたことにより、物品費及び旅費についての使用機会の頻度が低く、想定した予算執行が進められなかった。このことを踏まえて、今年度は演習講義に関するフィールドワークを中心に置き、パソコン、ビデオ、録音機材の購入等の物品費、そして、新たな研究分担者の追加によるフィールドワークおよび会議に伴う旅費等の大幅な執行を予定している。また、人件費・謝金等の執行は、最終年度の実践者に対するインタビュー調査を中心とした活動のために支出することを予定としている。
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