研究課題/領域番号 |
18K18608
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
本多 裕司 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (40399382)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | レジスタントスターチ / コシヒカリ / 重イオンビーム |
研究実績の概要 |
近年、難消化性澱粉(レジスタントスターチ、RS)を多く含む食品の栄養機能が注目されており、血糖値上昇抑制や脂質代謝の改善等に寄与することが分かってきている。RSの摂取によって健康を維持するためには1日に20 g以上のRS摂取が必要とされている。従って、主食である炊飯米から日常的にRSを摂取することができれば、我々の健康維持につながることが期待される。ところが、これまでに報告されているRSを多く含む米の炊飯米はそのままでは食べにくく、様々な加工が必要である。 コシヒカリは日本を代表する食味の良い米の一つであり、全国で栽培されている米である。石川県立大学の西澤らは、コシヒカリに重イオンビームを照射した変異米2500系統以上を得ており、これらのライブラリーからカドミウム吸収を抑制した系統や鉄分が増強された系統が開発されている。本研究では、上記の変異型コシヒカリのライブラリーの中から、コシヒカリの食味を維持しながらも難消化性を示す系統を育種することを目的とした。今年度は前年度に選抜した系統をいくつか栽培し、ブタ膵臓由来α-アミラーゼを反応させた。反応液上清の還元糖を定量し、各系統のアミラーゼ分解活性を決定した。また、炊飯米の食味の指標とした保水量は、サーマルサイクラ―を用いて1粒で炊飯した炊飯米の膨潤率から計算した。以上の方法で難消化性と保水量を確認するとともに、一部の株を次世代DNAシーケンサーの分析に供し、野生型コシヒカリのゲノムと比較して、変異型コシヒカリの遺伝子が異なっている領域を調べた。その結果、変異型コシヒカリのゲノム中に欠損した遺伝子領域をいくつか見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野生型コシヒカリと変異型コシヒカリを交互に配列して栽培し、収穫した。脱穀と籾摺りを行った変異米を粉砕して得られた米粉に、ブタ膵臓由来α-アミラーゼを反応させた。反応液の上清の還元糖を定量し、各系統のアミラーゼ分解活性を決定した。また、炊飯米の食味の指標とした保水量は、サーマルサイクラ―を用いて1粒で炊飯した炊飯米の膨潤率から計算した。難消化性を示した系統の遺伝子に関する情報を得るために、一部の株を次世代DNAシーケンサーの分析に供し、野生型コシヒカリのゲノムと比較して、変異型コシヒカリの遺伝子が異なっている領域を調べた。今年度は試料を動物実験に供する予定であったが、試料の選定に時間がかかったので、年度内に供することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
重イオンビーム照射によって欠損した遺伝子領域を見いだしたので、その領域を指標にして選抜を試みる。選抜した系統は圃場で再度栽培した後に、炊飯米の耐アミラーゼ活性を測定して、難消化性について検討する。また、難消化性を示した変異米の澱粉を分離し、澱粉の物理化学的性質から、難消化性を検証する。さらに、凍結乾燥した炊飯米を粉砕して、マウスに経口投与した後に血糖値の推移を測定し、各変異米の血糖値上昇抑制効果について評価する。炊飯米の食味を評価するために、官能検査を実施することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は動物実験を委託する予定であったが、試料の選定に手間取ったので今年度中に供することができなかった。これらの実験は次年度に実施する。
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