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2018 年度 実施状況報告書

沖縄の地域文化に根ざした自死遺族支援の構築―相互扶助の中で忌避される自死―

研究課題

研究課題/領域番号 18K18611
研究機関名桜大学

研究代表者

鈴木 啓子  名桜大学, 健康科学部, 教授 (60224573)

研究分担者 新里 美智子  名桜大学, 健康科学部, 助教 (20816756)
鬼頭 和子  名桜大学, 健康科学部, 准教授 (90714759)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワード自死遺族支援 / 地域文化 / 相互扶助 / 沖縄 / 特殊葬法 / 自殺
研究実績の概要

本研究は、相互扶助文化の根強い沖縄において自死遺族支援が進まない背景を分析し、沖縄の地域文化に根差した支援方法の構築を目指している。今年度は、①沖縄の葬送儀礼に関する資料収集および分析、②沖縄県北部地域1か所および島嶼1か所の葬送儀礼および地域における清明命祭時のフィールドワークを実施し、③自死遺族4名、自死遺族支援の専門家4名、自死遺族でない地域住民5名、神女およびユタ各1名への面接調査を実施した。
フィールドワークを通して、沖縄地方における墓の持つ意味や影響力の大きさを把握することができた。特に村の墓でもある共同墓は戦争中日本軍により荒らされ骨が誰か不明な状態になってしまった結果、各門中に遺骨を移動させることができない状況を把握できた。墓と遺骨を大事にする祖先崇拝が息づいていることを確認した。
また、面接調査では、自死遺族が「自殺者の遺骨を先祖の墓から出せ」と親戚に迫られたり、沖縄独特の仮墓(本墓には入れない事情のある場合に入る)に納骨し、その後、長寿を全うした死者が出たときに初めて、その死者の骨と共に自殺者の本墓への納骨が可能になる等自殺者の死後の納骨およびその後の祭祀に関する対応が特殊であることが確認できた。一方、地域住民への調査から、地域によってはこの仮墓の扱いが異なり、さらに地域毎に儀礼の取り扱いが時代と共に変化し、さまざまなバリエーションがあることも明らかになった。また、神女およびユタ各1名からは仮墓と本墓の関係について、本来は自殺者等の「異常死」とみなされる死と「異常でない」死には区別はあってはならないとの認識がスピリチュアルな視点から明確になった。
地域に根付いている「自殺が出ること」の意味付け、その「死後の取り扱い」は背後にある「地域文化」によるが、それは地域の都市化という「歴史的経緯の中での変化」により複雑な様相を呈していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

当初は自死遺族を対象とした調査を行ってから、自死遺族でない一般地域住民を対象とした調査を予定していたが、研究協力を頂ける自死遺族の方が限られたため、全般的に当初の計画が遅れることになった。このため、自死遺族支援にあたる専門家への調査を優先し、また、ユタや神女への調査を平行して実施することにした。これにより、異なる協力者から得られた情報をつなぎ検討できるというメリットもあった。次年度は、自死遺族の協力者への協力依頼を自死遺族支援のためのセルフヘルプグループや支援組織等との連携を強化し、協力者を確保することが課題となっている。

今後の研究の推進方策

次年度は、新たに沖縄県内の葬儀社5か所において調査を実施する。これと同時並行で、自死遺族への聞き取り調査、および自死遺族でない、かつ、地域生活の伝統的儀礼(特に葬送儀礼)や伝統的慣習に詳しい一般市民を対象にした調査も引き続き実施する予定である。これらを合わせて、沖縄県における自死遺族支援のあり方を検討していく予定である。また、これまでの成果についてはICNカンファレンス(シンガポール)で発表する。

次年度使用額が生じた理由

今年度、購入予定であった自殺関連書籍および沖縄の儀礼葬送文化関連書籍・資料については、予定していた書籍の品切れ等で購入できた内容が限定されたこと、また当初予定していたノートpcの購入が遅れたことが理由に上がる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 自死遺族支援を立ち上げた遺族の体験と求める支援2018

    • 著者名/発表者名
      新里美智子、鈴木啓子
    • 学会等名
      日本質的心理学会第15回大会

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公開日: 2019-12-27  

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