オンラインやハイブリッドでの計算物質科学分野の総合育成プログラム開発のため、その構成要素であるオンラインでの講義とソフトウェア実習で構成されるセミナーや、研究者のトランスファラブルスキル向上のための個別のセミナーを試行しその有効性を解析した。さらに、コロナ禍以前とコロナ禍での計算物質科学分野の博士人材や若手研究者向け教育目的セミナーの施行状況を元に、その解析比較を行った。 コロナ禍の2020-2021年度に実施したオンラインセミナーでは、それ以前のオンサイト・オンライン・ハイブリッドのセミナーと比べ、参加者の所属機関や所在地に広がりが見られた。加えて、企業参加者の比率が増加する傾向にあった。また、英語実施のセミナーでは海外からの参加者も多くあった。以上の通り、幅広い層への教育目的セミナー、特に座学形式のセミナーにおいて、参加者の所属や居場所に依存しないオンライン実施の有用性が示唆される結果を得た。 その一方で、参加者の事後アンケート結果に基づくと、オンラインセミナーでは、オンサイトのセミナーと比較して、参加者が感じるセミナーレベルの上昇や、興味や満足度の減少傾向が若干あり、参加者の積極的な参加の減少、講師による参加者の参加状況(理解度の把握)の困難さ等の課題があることが示唆される結果を得た。しかしながら、オンサイト、オンラインのいずれでも、コンピュータ実習は講義に比べ興味や満足度が高い傾向にあり、参加者参加型の実習の有効性は変わらず、オンラインやハイブリッドでの計算物質科学分野の総合育成プログラム開発が必要である。 また、今後のセミナーについての希望調査の結果では、オンラインかつ無料開催での参加希望が多かったがオンサイトの希望も一定数あり、オンライン・オンサイト・ハイブリッド等多様な実施形式により総合育成プログラムの参加形式の選択肢を広げる必要性が示唆される結果を得た。
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