研究実績の概要 |
本研究は,初等中等教育における学習者用デジタル教科書・教材の学習ログ等を解析することによって,学習者個々の,授業の局面ごとの学習成立を推定する技術を検討するものである。これまで教師が行ってきた学習成立の看取りやその対応に対し,情報技術によって積極的にカバーできる部分を見出し,教師の経験に頼って進められている指導から,学習者特性に応じて最適化された科学的な指導へと改善することが挑戦的研究としての意義である。 第1年次は,検定済の教科書コンテンツを実行可能にする学習者用デジタル教科書・教材用ビューアを機能拡張し,荒川区教育委員会の協力により,同区内のA小学校の第1学年から第6学年の算数科・社会科の学習者用デジタル教科書の操作ログを,14ヶ月に亘り,述べ280名分,約45,000レコード取得した。 第2年次は,この操作ログに対して,学年・教科毎に操作ログの多かったページを特定し,利用された機能とコンテンツ等を分析した。集計対象となった操作ログは,算数科15,999件,社会科23,841件であり,うち操作ログが一定時期に集中している学年の同日の操作ログを詳細に分析した。 その結果,算数科で最も多くの操作ログが確認された教科書の見開きページでは,グラフの拡大が多く利用されており,社会科では写真の拡大が多く利用されていた。最も利用された機能は,両教科ともポップアップであった。 教科書制作者に確認したところ,両教科とも,必ずしも拡大表示されることを意図したコンテンツではない場合があることがあった。今後,学習者用デジタル教科書が広く使用され,操作ログ数や種類が増え,より詳細な分析を行うためには,人手を介さずに情報の集約等の自動分析を可能とする操作ログの生成形式が期待される。
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