研究課題/領域番号 |
18K18621
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
水谷 好成 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40183959)
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研究分担者 |
福井 恵子 宮城教育大学, 教員キャリア研究機構, 助手 (00238453)
鵜川 義弘 宮城教育大学, 教員キャリア研究機構, 教授 (20232803)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 知的特別支援教育 / デジタル工作 / 作業学習 / ものづくり / 知的特別支援学校 |
研究実績の概要 |
知的障害特別支援学校の作業学習では,生徒の特性に合わせて作業分担をして製品を完成させる。社会福祉作業所作業のVVF電線ケーブルの被覆剥ぎ作業において,安全面から知的障害工員に分担させられなかったケーブル切断とビニル被覆の切れ目入れ作業に対して,生徒の特性を考慮した補助具を開発・適用することで,作業の全工程を生徒だけでできるようにすることができた。レザークラフト作業において,細長い革紐を使ったネームホルダー制作を検討した。5mm幅で1m長さの革紐の切り出しは難しいが,長尺の押さえができる切り出しカッター補助具を開発・適用した結果,生徒の作業としてできるようになった。適切な補助具の開発と適用したことで,繰り返しの同一作業をすることが得意な特性を持つ生徒でも通常学校の生徒を超える製品を作ることができるようになった。知的障害生徒の学習にICT機器は有効である。フォーマットさえできていれば,注文に応じた名刺をコンピュータを使って制作でき,名刺作りの受注作業が実現できる。デザインを得意とする生徒の特性を活かすことで,様々なデザインの名刺を作ることができた。大学や附属学校の教職員・PTA活動で用いる名刺の受発注は作業学習の中に組み込むことができた。さらに,プリンタ出力を2Dデジタルカッターに換えれば,色々な作業が実現できるようになる。デジタルカッターでステンシルシールを制作すれば,不織布バッグやコースターなどのデザイン加工に活用できる。ICT機器の学習に興味関心のある生徒に対してOSMOコーディングを用いた簡単なプログラミング学習を適用した結果,生徒の理解度にも依存するが,論理的考え方を身につける学習の一つとして有効であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
デジタル工作・ICT技術を知的障害生徒に適用する前段階として,生徒の特性に応じた補助具の開発と適用が作業学習の可能性を広げることを確認できた。生徒の特性に応じた補助具の設計と開発と適用において,特別支援学校の担当教員と大学教員とが連携する体制を作ることができた。コンピュータを使った名刺作りの発展として2Dデジタルカッターを活用した作業学習の可能性を確認することができた。通常学校で行われているプログラミング学習を含むICT学習も,知的障害学校の生徒の特性に応じた学習プログラムを構築できれば,従来できていなかった学習の提案ができる可能性が示され,次年度の計画の手がかりが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
デジタル工作・ICT技術を使った作業学習として,レザークラフト作業に注目する。革製品のデザインに行っている刻印作業に対して,刻印打ち作業が難しい生徒でも簡単に操作できる補助具を開発・適用する。3Dプリンタを使うことで刻印のデザインを増やすことを考えている。デジタル工作機器を生徒自身が操作できるようにする方法と並行して,担当教員がデジタル工作機器を扱って補助具を作って生徒に開発した補助具を使う方法についても検討する。大学の研究室と特別支援学校の教員と生徒という3グループの組み合わせとしての新しい作業学習のテーマ開発をしていく。また,大学の施設・教員の協力で実施する生徒のICT学習メニューを選択学習として実施・検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
知的障害特別支援学校の作業学習で研究実践をする場合,生徒の特性を把握している担当教員と連携して計画の立案と遂行をする必要がある。6月末の採択決定以後,対象となる生徒の特性に留意して研究計画を再検討したため,初年度の作業学習(授業)における実践は後半が主になった。そのため,研究成果の発表に関わる旅費の執行は第二年度に回すことにした。また,第二年度の実践学校の前半の授業開始に対応できるように研究計画を修正した。そのため,初年度年度末発注の物品が増え,第二年度の授業開始時の納品・支出となった。実践対象の生徒のメンバーも年度によって変わるため,必要となる物品にも変化が生じる。そこで,第二年度前半の実践に柔軟に対応できるように,予算の一部を第二年度に執行するように計画を修正した。
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