研究課題/領域番号 |
18K18625
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
坂尻 正次 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (70412963)
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研究分担者 |
大西 淳児 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (30396238)
福永 克己 筑波技術大学, 保健科学部, 講師 (50455945)
上田 麻理 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (70786409)
三浦 貴大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (80637075)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | スポーツ聴覚 / 視覚障害スポーツ / 聴覚による環境認知 / 無観客試合 / ゴールボール / バレーボール / 野球 |
研究実績の概要 |
2020年度は以下の4項目に取り組んだ. 1) 遠距離(数10m以下)からの到来音の訓練システム開発のための音響環境計測:ゴールボールの訓練システムの改良を目的に,試合中の具体的なシチュエーションごとに手がかりにされうる音要因についての調査項目を列挙の上で,アンケートとして取りまとめた.本アンケートは2021年度に実施予定である. 2) 晴眼者におけるスポーツ時の聴覚利用の検討:視覚障害者スポーツで見られる聴覚情報の利用が,晴眼者のスポーツでもなされるか調査した.まず,前年度に取得したバレーボール競技における聴覚利用に関して追加検討を行った.結果より,競技年数が多い者にて,自軍におけるサーブレシーブやディグの際の発生音を有意に頼りにする点が示唆された.次に,野球・サッカー・テニスにおいて同様の聴覚情報の利用状況の他,アンビエントサウンド(観客の声など)が気にされるかを調査した.結果より,野球やテニスにおいてサッカーよりもアンビエントサウンドが概して気にされた.さらに,野球においては,守備位置ごとの有意な差が確認され,投手よりも内野手が音情報を気にしていた. 3) 観客の有無による競技者・観戦者における音の臨場感に関する検討:観客の有無に伴う臨場感の違いについて,野球を想定したアンケート調査を行った.結果より,無観客試合は競技者における競技意欲は有意に低い一方で,試合への意識は大きくないと示唆された.また,観戦者においては,観客がいることで得点に直接繋がるプレーや,得点阻止に繋がるプレーの臨場感が高まることが示唆された. 4) 野球における打球音の音響的分析: 打者側方で収音された打球音の分析を行った.結果より,250 Hz以下の周波数帯域の音の大きさが,打球方向や指導者視点での評価などで有意に異なる点を示した.ただし,内野手・外野手の守備位置における違いなどは今後の課題である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の流行に伴う感染防止措置のため,当初計画していた視覚障害スポーツにおける聴覚訓練システムの開発・評価が遅れた.このため,「やや遅れている」と達成度を評価する.ただし,この状況に伴って,無観客試合における検討や晴眼者スポーツにおける検討などを推し進められ,聴覚的手がかりを通じたスポーツのインクルーシブな体験に繋げるための観戦者目線などでの知見が得られた.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は,計画時点で想定した3課題に加えて,聴覚的手がかりを通じたスポーツのインクルーシブな体験に向けた晴眼者における検討を加えて研究を遂行していく.具体的な実施内容は以下を想定している: 1) 遠距離(数10m以下)からの到来音の訓練システム開発のための音響環境計測:ブラインドサッカー競技における聴覚訓練要素の抽出を行った上で,ブラインドサッカー競技者を想定した訓練支援システムの開発・評価を行う.また,ゴールボール競技における訓練効果を及ぼす要因についてアンケート調査を行い,結果を基に訓練システムの改良・評価を行う. 2) 近距離(約5m以下)における到来音の訓練システムの開発:特に,サウンドテーブルテニスの訓練システムで得られた回答結果や訓練効果と,録音音源における関係性についてモデル化を引き続き行い,訓練システム上で特に効果があった場合や訓練に難があったケースについて取りまとめる.また,1)と同様,音環境のバーチャルな作成が可能であるかについて引き続き調査・確認する.その上で,訓練効果についても調査を行う. 3) 密接距離(約1m以下)における訓練システムの開発:前年度に評価までを行ったブラインドクライミング支援システムについての追加分析を行う.その上で,効果的な訓練を行うための改善要素を抽出し,システムの改良を試みる. 4) 晴眼者におけるスポーツ時の聴覚利用の検討:2020年度までに得られた結果を再分析し,晴眼者・視覚障害者における聴覚利用に関しての共通要因を明らかにしていく.また,競技者目線だけでなく,観戦者目線での印象評価なども行った上で,スポーツのインクルーシブな参加体験を得るための方策について探っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行に伴う感染防止措置のため,本来予定していた実験・調査等々が実施できなくなったために,次年度使用額が生じた. 本年度は,「今後の研究の推進方策」の箇所で述べた通り,アンケート調査などを含めて調査検討の他,競技場面の体験・訓練システムの開発・評価に予算を使用する計画である.
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