研究課題/領域番号 |
18K18626
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
根津 友紀子 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任研究員 (00746779)
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研究分担者 |
山本 仁 大阪大学, 安全衛生管理部, 教授 (20222383)
大島 義人 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (70213709)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 実験行動解析 / 動線解析 / モノの扱い方解析 / 実験室環境解析 / 化学物質濃度分布 |
研究実績の概要 |
実験行動解析:島形に2つの実験台を配置し、3×2の通路がある模擬実験室において、被験者に移動指示を出すことでその際のルート選択を記録した。実験条件として、通路上の椅子に障害物となる人が着座した条件や、一部の通路幅を変化させた条件について、それぞれ動線データを取得した。その結果、障害物が存在する場合は、最短ルートと障害物の位置関係によりルートを選択する傾向があること、通路幅については、70cm程度ではルート選択に影響がないが、55cm以下では大きな影響が見られることを明らかにした。これらの実験から得られたルート選択率を用いて、動線シミュレーターを作成した。これを用いて、実験室に実験者が1~5名いる条件、2人の実験者がいる条件での異なる道幅の条件のそれぞれにおけるシミュレーションを1000回行い、実験者同士の接触回数を算出した。その結果、実験室を共有する実験者数が増加するにつれて、接触の回数が指数関数的に増加した。さらに室内の通路幅の狭める場所によって、接触回数や頻度に影響を与える可能性が示された。今後は、作成したシミュレーションの精度を向上させるために、実際の実験室で様々な条件に対するデータを取得する予定である。 実験室環境解析:化学実験室においては、廃液タンクや洗瓶、分析装置等から定常的に化学物質が拡散している可能性がある。一方で、室内は局所排気装置、換気扇、エアコン等により複合的に室内気流を形成していると予想され、室内に濃度分布がある可能性がある。そこで、縮尺模型を作製し、ある換気条件における室内の濃度分布を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実験行動解析:実験室を利用している実験者の動線が何によって決まっているのかを明らかにするために、まずは模擬実験室における実験者動線を実験的に取得し、その特徴について解析を行った。新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、対象とする学生実験への研究協力を依頼することができず、実際の学生実験を対象として実験をすることが難しい状況となった。従って、実際の学生実験を対象とはせず、模擬実験室を利用して、個々の条件における実験者動線の情報を取得し、それらを用いてシミュレーターを作成した。 実験室環境解析:今年度は縮尺模型を用いて、人の移動や扉の開閉による室内の濃度分布への影響等を検討することを計画していたが、活動制限により、模型を作製し、ある換気条件における濃度分布を測定するに留まった。しかしながら、動線シミュレーションの作成により、人の移動についての条件を具体的に設定できる可能性が出てきたことは予定通りの成果と考えている。 しかしながら、全体としての進捗は遅れていることと、新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、今後の方針に示すように予定を変更して来年度引き続き検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
実験行動解析:動線シミュレーターの精度向上のために、実験の実施とシミュレーターの改良をする計画である。実験は、来年度も学生実験室を対象とすることは難しいと考えられるため、模擬実験室および実際の研究実験室で、シナリオ設定や環境設定を変更した条件で、実験者動線を取得する。これらのデータを用いて、研究実験室における実験者動線をシミュレーションした結果と実際の実験室での結果を比較することで、シミュレーションの精度を検証する。一方で、同様に、同一シナリオで複数の実験者が空間を共有して実験を行う学生実験を対象にシミュレーションを実施する。その際、教員や実験TAの動きをどのような設定で入れるかについては、学生実験担当者にヒヤリングの上、決定する。 実験室環境解析:改良した実験者動線シミュレーターによる、実験室内の実験者動線情報をもとに、室内での実験者の移動を模擬し、気流や濃度分布への影響を縮尺模型を用いて検討する。 これらの検討結果により、化学系研究実験室および学生実験室の合理的レイアウトについて議論を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、緊急事態宣言が出されるなど、研究活動の活動制限期間が数ヶ月におよんだ。従って、当初の計画通りに研究活動が実施できずに、研究に必要な備品、研究打合せおよび実験のための出張費を支出することがなかった。 2021年度は、前年度同様活動制限が見込まれ、学生実験を対象とした検討は難しいと予想される。従って、模擬実験室や研究実験室を対象に行うこと、模型を最大限に活用して実験室環境解析の研究を実施していくことを計画している。従って、動線解析に必要な通信機器の購入、模型作製に必要な材料、濃度測定器を購入する計画である。
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