研究課題/領域番号 |
18K18627
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
草なぎ 佳奈子 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任研究員 (00777873)
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研究分担者 |
北村 友人 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (30362221)
佐藤 真久 東京都市大学, 環境学部, 教授 (00360800)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 持続可能な開発のための教育 / 学びの共同体 / インドネシア / 授業研究 / 協働的な学び / 比較教育学 |
研究実績の概要 |
2000年頃に日本で生まれた「学びの共同体」の授業研究による21世紀型の学びの実現を目的とした学校改革は、近年アジアを中心に急速な勢いで広まっている。インドネシアでは、日本の支援で始まった授業研究から、専門家コミュニティーの構築を目的として、インドネシア側のイニシアティブにより学びの共同体に発展している数少ない事例である。現地の政府、大学、教師自身の手で継続され多様な学びのコミュニティーが広がっている。
本研究では、学びの共同体の活動・協同・反省の実践を持続可能な開発のための教育(E SD)の目指す主体的で自己変容を可能とするホリスティックなアプローチとして捉え、日本とインドネシアにおける実践を検証し比較分析を行う。今年度は、ESDに関する文献調査を行うとともに、学びの共同体のスーパーバイザーとして活動している専門家に助言を得て、日本・インドネシアとも地域、学校レベルの取り組みが5年以上継続している事例を選定した。ESDはその多様な学びの形態が特徴であることから、対象を学校に限定せず、全国・地域の学びの共同体コミュニティーについても調査を行う。インタビューでは、実践の歴史的背景と実践内容について調査を行った。調査の結果、インドネシア政府が大学と学校のパートナーシップを推進していることもあり、この視点も加えた分析を行う予定である。今後、更に調査を進め、学びの共同体の実践をESDの概念・枠組みと照らし合わせ分析を行っていく予定である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度は、先行研究のレビュー、調査対象の選定、分析の枠組みを明確にするため、ケースを限定した聞き取り調査を行った。
①先行研究のレビュー:日本・インドネシアにおける、学びの共同体の実践に取り組む学校、地域の学びのコミュニティーについて全体像を把握するため、文献・関連文書のレビューを行った。 ②二国の研究者の協議により、対象となる学校・地域を選定した。特に学びの共同体のスーパーバイザーとして活動している専門家に助言を得て、日本・インドネシアとも地域、学校レベルの取り組みが5年以上継続している事例に焦点を当てることとした。 ③海外調査の実施:日本・インドネシアにおける学びの共同体実践者・研究者に質問調査・聞き取り調査(スカイプ、現地訪問)を行い、日本とインドネシアにおける学びの共同体取り組みの現状とその特徴を理解し、今後の調査の枠組みを整理した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はさらなる現地調査を行い、以下の観点から分析の枠組みを整理することを予定している。 ①ESDの視点:ESDの実践として学びの共同体がどのような特徴があるのか、調査の枠組みとなる概念を整理する。②学びの専門家としての実践:ESD実践において特に重要視されている、主体性、人間性、他者との関わりと関連して、学びの共同体コミュニティーでどのような実践の問い直しが行われているかを検証する。③事例比較:両国の学びの共同体の実践において、ESDの枠組みで共通点・文脈依存性があるのか検証してまとめる。また、インドネシア側の大学・学校から本研究に関する講演依頼、実践交流の依頼があるため、インドネシアで日本の事例を紹介するなど積極的に発信も行っていく。 最終年度は引き続き調査を進め、それをもとに学びの共同体の実践をESDの概念・枠組みと照らし合わせ分析を行う。その調査結果にもとづき、ESDのアプローチに関する論考をまとめ、ESDの概念・理論的枠組みを構築する。この分析枠組みは、報告書ならびに学術論文のなかで提示し、教育関係者に配布する。 事例研究の比較:二国間で主体的な学びの専門家として活動する実践を調査し、ESDの先進的な事例としてまとめる。①概念・理論:日本とインドネシアの比較を通してESDの概念・理論を精緻化する。②現場へのフィードバック:主体的なESDの取り組みとそれを支援するコミュニティーに関して新しいアプローチを提案する。分析内容は国際学会等で発表を行い、論文として出版を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はジャワ島内が訪問先だったため、想定していたより旅費が安価に抑えられた。またインドネシア側と共同で研修を行ったため、謝金もかからなかった。来年度はより遠方の島々も含めた対象先となり、インドネシア側の協力者に調整・通訳係として同行してもらうため、旅費・謝金として使用予定である。
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