本研究の最大の目的である技能教育に必要な物的資源、教育経費の削減を実現するために、実習用模型の3DデータをハプティックデバイスであるSimodontに搭載し、技能訓練の完全デジタル化を目指したが、模型開発業者の買収等によりSimodontへのソフト搭載が困難となった。そこで、リアルな口腔内3Dデータの提供により、学生がより臨場感をもって実習を行うことができる環境整備へと方針を変えた。これまで代表者らが実習に用いてきた、口腔内のあらゆる歯科疾患を再現した模型は、一口腔単位を意識して技能訓練ができるという意味では大きな意義がある。しかしながら、この模型は従来のものと同様、実際の口腔内を忠実に再現したものではなく、リアリティーに欠ける難点があった。そこで、技術者と共に実際の口腔内を再現したリアリティーのある模型を作製し、これを口腔内スキャナーで読み込むことにより、ほぼ実際の口腔内を撮影した画像と同等の画像が得られた。次にこれを3次元の画像として学生に提供する可能性を探り、コンピューター画面上であらゆる方向から3次元的に観察できるデータを得ることができた。しかしながら、現在の技術では模型の読み込み後に色の情報を伴って3次元画像を構築することができず、モノクロ画像への後からの着色という手法をとらざるを得ず、色の再現性という点で問題が残っている。一方、デジタルデータによる学生への口腔情報の提供は、実習開始時に重要であるばかりではなく、実際の患者への治療経過と同じく、実習の進行に伴って変化する必要があると考えた。そこで、広島大学の研究者と共に、学生が実習の進行に伴ってその情報を入力すると、画像上の口腔内がこれに従って変化するソフトの開発に着手した。現在そのプロトタイプが完成している。
|