研究課題
本研究では,(1)算数・数学科において前提追究活動を促進する教材の開発原理を構築すること,(2)開発した教材を小中学校で実践し,その結果を分析することにより,教材の開発原理の有効性を明らかにすることを目的としている。本年度は,まず前年度に実施した予備調査の分析から行い,その後,教材開発原理の構築を進めた。教材開発原理については,まず,「問題の前提を意図的に曖昧にすることにより,問題について異なった前提の下で考えられるようにすること」と「それらの異なった前提によって,異なった答え(互いに矛盾しているように見えるが各々の前提に基づけばそれぞれ正しい)が生まれるようにすること」の二つを設定した。次に,これまでの実践の結果を受けて,新たな原理として,「矛盾した答えが問題上では可能であっても児童生徒が自ら考え出しそうにない場合は,そうした答えの存在に児童生徒が気づけるようにすること」を加えた。その後,これらの三つの原理に基づいて実際に教材を開発し,長野県内の公立小学校第5学年のクラスで実践授業を行った。授業の詳細な分析は次年度に行う予定であるものの,結果は概ね良好で,教材開発原理の有効性が示される見通しを得ている。上述の研究活動と並行して,日本数学教育学会第52回秋期研究大会等で研究発表を行った。また,イギリスを訪問して複数の現地研究者と研究討議を行い,教材開発原理の国際的通用性について検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画では,令和元年度に,教材開発原理の設定,教材開発,調査の実施を行う予定であった。調査の分析が残っているものの,当初の予定は概ね達成することができている。
令和2年度は,調査の分析を通じた教材開発原理の有効性の検証を進めるとともに,教材開発研究の方法論の検討も合わせて行う。これまでと同様,海外共同研究者との議論や国際学会での研究発表などを継続的に行っていく。
調査の分析を次年度に行うことになり,それに伴う物品費(書籍)や謝金(学生補助)などが持ち越しとなったため。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
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