研究実績の概要 |
本研究では,(1)算数・数学科において前提追究活動を促進する教材の開発原理を構築すること,(2)開発した教材を小中学校で実践し,その結果を分析することにより,教材の開発原理の有効性を明らかにすることを目的としている。 本年度は,研究期間の最終年度として,デザイン研究を方法論としてこれまで行ってきた研究成果の取りまとめを行った。まず,数学的活動における前提の役割から,意図する学習目標として,結論の正否の相対性と前提の明確化の重要性の理解を設定した。そして,前提の種類を,命題的/用語的と大局的/局所的の観点から4つに分類した上で,その分類の中でも課題の条件と用語の意味に焦点を当てた。その上で,先行研究を根拠として,課題の前提を意図的に曖昧にすることで異なった前提の下で課題が考えられるようにする等,3つの課題設計原理を構築した。次に,仮説的学習軌道という概念を援用して課題を設計し,小学校5年生と中学校3年生を対象として行った授業実践の結果を分析した。その分析結果から,新たに課題設計原理を1つ加え,洗練した課題設計原理の有効性を示した。さらに,研究から得られた示唆として,課題を設計する際は児童生徒の既有知識を十分に考慮することが重要であること等を指摘した。以上の成果を論文としてまとめて学術誌に投稿した。 上述の研究活動を海外共同研究者と議論しながら進めるとともに,第45回国際数学教育心理研究学会(PME45, The 45th Conference of the International Group for the Psychology of Mathematics Education),日本数学教育学会の春期および秋期研究集会に参加し,研究討議を行った。
|