研究課題/領域番号 |
18K18649
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
橋爪 一治 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (70709740)
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研究分担者 |
伊賀崎 伴彦 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70315282)
大谷 みどり 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (80533299)
樋口 和彦 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (80710110)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 小学校外国語 / ディスグラフィア / 仮想現実 / 書字指導 / 感覚統合 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ディスグラフィア(書き障がい)の児童が,新しく導入される外国語科で英文を書けるようになる指導法の開発である。指導には,学習者であるディスグラフィア児に対し,視覚,聴覚,触覚にはたらきかけて,文字は「どこからどの方向へどれだけ線を引くか」などの書字を構成する各行為を理解・認知させ書字技能を高めるこれまでの指導と全く異なる新しい手法をとることとした。 このため,当該年度の計画として,スペリングに巧緻性を持つ者の書字動作技能の記録を行うこととした。具体的には,熟練者の書字動作のうち,どこを見ているか,筆記具の運針や筆圧など,どの順番でどこからどこへ鉛筆を動かしているかを,視線計測装置や力覚デバイスを用いて記録することとした。 これに加え,ディスグラフィア(書き障がい)の児童は,どうして文字が書けないのかを解明するため,大量に文献研究行うと同時に,専門の研究者の最新の知見を得るため,数名の研究者へ聞き取り調査を行った。 さらに,ディスグラフィア(書き障がい)の児童は,書きのどこにつまずきが見られるのかを,明らかにする診断ソフトウエアを開発した。この診断ソフトは,タブレット上で動作し,被験者がスタイラスペンで操作する仕様である。タブレットの画面にアルファベットが表示され,アルファベット上を視標が移動する。被験者は,視標に合わせ,スタイラスペンでアルファベットをなぞる。つまり,被験者にとっては,アルファベット練習ソフトになっている。検査終了後に,被験者のペンの軌跡が時間軸で再生でき,記録ビデオ映像と合わせた,被験者のつまずき箇所を解明できるように設計した
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,ディスグラフィア(書き障がい)の児童が,新しく導入される外国語科で英文を書けるようになる指導法の開発である。指導には,学習者であるディスグラフィア児に対し,視覚,聴覚,触覚にはたらきかけて,文字は「どこからどの方向へどれだけ線を引くか」などの書字を構成する各行為を理解・認知させ書字技能を高めるこれまでの指導と全く異なる新しい手法をとることとした。 そこで,まず本年度はその手がかりを得るため,ディスグラフィア(書き障がい)の児童は,どうして文字が書けないのかを解明することにした。このため,大量に文献研究行うと同時に,専門の研究者の最新の知見を得るため,数名の研究者へ聞き取り調査を行った。 次に,当該年度の計画としていた,スペリングに巧緻性を持つ者の書字動作技能の記録に取り組んだ。具体的には,熟練者の書字動作のうち,どこを見ているか,筆記具の運針や筆圧など,どの順番でどこからどこへ鉛筆を動かしているかなど,どの動作をどの装置で記録し,提示するのが,書字の学習者にわかりやすいのかを検討し記録しているところである。 さらに,ディスグラフィア(書き障がい)の児童は,書きのどこにつまずきが見られるのかを,明らかにする診断ソフトウエアを開発した。 このように,当初の計画をほとんど実行すると同時に,申請時点で計画のなかった,つまずきの解明について,先行研究調査と,診断ソフトの開発を行った。このため,評価を「概ね順調に推移している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
研究に関する次の段階として,まず,開発したソフトウエアでディスグラフィア児を含めた多くの児童の書字の状況を分析し,ディスグラフィア児ごとに,どこにつまずきが見られるのかを明らかにする。このことから,本指導・支援で「文字が書けるようになる」という効果が期待できる状態とは,どのようなことなのかを把握する。 この作業と並行して,ディスグラフィア児に提示する,健常者のアルファベットの書字状況をヘッドマウントディスプレイに投影するための映像,力覚デバイス装置での再生コンテンツ,始点や書く順序などの音声説明などを統合した教材を制作する。制作した教材の有効性を検証するために,大学生を被験者として,書字動作が視・聴・触覚から得られ,自分自身が書字を行っている感覚が知覚できるか否かを確認する。 さらに,その次の段階では,ディスグラフィア児を被験者として,開発したシステムで英文をうまく書くことを疑似体験させる指導について,被験者の技能改善状況を,構成行為の理解度や運筆状況などの指標で定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた物品購入計画を,次年度へ先送りしたためである。その理由は,当初は,先に物品を購入しておき,研究に使用する準備を早めに済ませ,いつでも研究機器として使用できる状態をつくろうと計画していた。しかし,本研究に必要なVR再生装置などは,最先端技術を応用して製品化が図られるため,次々に,新製品が発売される状況である。このため,購入時期をずらし,必要生が生じた時点での新製品を購入した方が,機能的に優れた製品が購入できると考えたためである。
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