研究課題/領域番号 |
18K18651
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
村澤 昌崇 広島大学, 高等教育研究開発センター, 准教授 (00284224)
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研究分担者 |
安部 保海 広島大学, 教育室, 研究員 (20531932)
渡邉 聡 広島大学, 高等教育研究開発センター, 教授 (90344845)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 高等教育 / 教育研究の相乗効果 / 多目的同時最適化 |
研究実績の概要 |
本研究は、世界レベルの大学ランキングを批判的に分析・検討し、公平性と卓越性を始めとした多目的・多機能の同時最適化を図れる理想の大学モデルを模索することにある。本研究の意義は、(1)一般的にトレード・オフの関係にあり競合しさえする大学の多様な使命を、同時に最適な解へと導くための大学モデルを探索するという点にあり、(2) 大学システム全体での均衡解(大学間機能分化)を求めず、大学単体(特に研究大学)としての多目的同時最適化を探索する点にある。特に(3)卓越性・効率性に囚われた現況では、大学の「公平性」「平等性」の使命を重視し分析する点は、先見的・独創的である。さらに (4)この問題を解くために、数理経済学・数理物理学・統計モデル・線形計画法を応用し、高等教育研究における理論・方法論の脆弱性を刷新し、科学的根拠に基づいた知見を提供することがきる点に卓越性がある。 現況は、大学教員の個人レベルでの教育研究活動の最適化についての数理モデルを構築中であり、教育・研究の相乗効果を数理モデル化しつつある。その成果は31年度初頭に紀要等にて出版予定である。 また、本課題を達成するためには、方法論の深化が不可欠であり、高等教育研究における計量分析の現況と課題についての検討を行うとともに、計量分析手法そのものについての動向と課題に関しても追跡・整理した。その結果、EBPMで推奨されるRCT至上主義の陥穽を指摘するとともに、RCTの代替選択肢としてのPearl流分析アプローチの可能性を検討した。その成果の一部は今年度発刊予定である『教育社会学研究』に掲載予定であり、且つ『高等教育研究叢書』として年度末に刊行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究協力者の参画により、大学教員の個人レベルでの教育研究活動の最適化についての数理モデルを構築中であり、教育・研究の相乗効果を数理モデル化しつつある。その成果は31年度初頭に紀要等にて出版予定である。 また、本課題を達成するためには、先行研究の検討と方法論の深化が不可欠であり、平成30年度は、高等教育研究における計量分析の現況と課題についての検討を行うとともに、計量分析手法そのものについての動向と課題に関しても追跡・整理した。その結果、EBPMで推奨されるRCT至上主義の陥穽を指摘するとともに、RCTの代替選択肢としてのPearl流分析アプローチの可能性を検討した。その成果の一部は31年度発刊予定である『教育社会学研究』に掲載予定であり、且つ『高等教育研究叢書』として年度末に刊行予定である。 また、大学の目的の一つである研究生産について、従来の分析モデルの脆弱性を指摘し、Zゼロ過剰モデル、ハードルモデルの有効性を提案した。その成果は『名古屋高等教育研究』にとりまとめた。 以上のように、研究開始の初年度から一部成果を達成し業績として積み上げつつあるので、「順調な進展」とした。
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今後の研究の推進方策 |
①30年度に引き続き、多目的の同時最適化に関する数理モデル・シミュレーションに関する先行研究の検討を行う。併せて、昨年度に構築しつつある教育研究の同時的最大化に関する数理モデルの深化を行う。構築した数理モデルの実証については、「大学教授職」研究にて収集された大学教員に関する時間配分・研究教育成果のデータを用いた分析を通じて行う。 ②課題遂行のための機関レベルでのデータの整備を進める。その際、東京大学大学経営政策コースと広島大学高等教育研究開発センターが連携して進めている「大学機関データベース」および東洋経済新報社刊の「大学四季報」データのパネル・データ化による整備を進める。加えて、JASSO収集による学生生活調査の機関集計値データのパネル化も模索する。併せて機関データの不足分については、質問紙調査を通じたデータの収集を行う。 ③併せて、平成30年度に積み残していた「大学ランキング」の批判的検討に関して、方法論的アプローチからの検討を試みることにより、ランキングの検証と計量分析の高度化をはかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた分析用の統計ソフトおよび高度演算用の機器の購入を見合わせ、既存のソフトと機器での対応が可能であったことと、当初予定していた研究会の開催が、予定よりも少ない回数で終えたことにより、次年度に繰り越しすることになった。 今年度は、初年度に進めた数理モデルの構築が終了し、実証分析を本格的に進める予定であること、その際にソフトと機器のアップデートが必要なこと、データの更新も必要であることから、次年度使用額と今年度使用額を合わせての運用をすることにより、順調に予算運用することが可能である。
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