研究課題/領域番号 |
18K18653
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安武 公一 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (80263664)
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研究分担者 |
多川 孝央 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (70304764)
山川 修 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (90230325)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 学習科学 / 協調学習 / 複雑ネットワーク科学 / 計算社会科学 / シミュレーション分析 |
研究実績の概要 |
本研究は本来は令和2年度(2020年度)が研究最終年度であった.しかしながら昨年提出した研究実績報告書に記載したように,SARS-Cov-2の世界的パンデミックの影響は多方面に渡って研究に影響を与えたため,令和3年度に研究の繰越申請を行った. しかし残念ながらCARS-Cov-2によるCovid-19のパンデミックは2020年度に続き2021年度で収束することはなく,この影響で2021年度に予定していた繰越研究の多くも未完了のまま残ってしまった.もちろん2020年度同様,リモートでの研究ミーティング開催など考えられる代替的な研究活動は行ってきた.しかしながら,複雑ネットワークの知見と数学関連書領域の知見を組み合わせて協調学習モデルを構築するという,教育工学・学習科学研究では未踏の研究テーマにチャレンジするためには,はやり想定した以上の思索と議論の積み重ねが必要であり,それをリモート環境のミーティングだけで実施するには,多くの困難が生じていた. ただし,「圏論」と複雑ネットワーク科学の知見を組み合わせるという当初のアイデアにさらに新しいアイデアを組み込むことに至ったのは,2021年の大きな研究成果である.それはエンゲストロームの活動理論に着目して「エージェンシー」概念を活動理論をベースとして理論化する,という方向である.この方向をさぐるためにわれわれはエンゲストロームの著作に関する,オープンなリモート勉強会を立ち上げ,現在のところ,基本的に毎月1回最終月曜日に開催している. こうした研究の推進状況であったためわれわれは止む無く本研究をさらに2022年度へ繰り越すことを決定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上の「研究実績の概要」でも述べたように,Covid-19の影響により,本来は2020年度に完了するはずであった本研究を一度2021年度へ繰越申請したものの,さらに再度2022年度へ繰越申請を行わなければならなかったこと,昨年に引き続き,当初予定していた国際会議の多くが中止や延期となったこと,それが当初の計画に対して「遅れている」と判断した理由である. しかしながら,「圏論」の枠組みで学習者の「関係性」を理論化しこのコンセプトと複雑ネットワーク上でのダイナミクス現象としての協調学習を組み合わせることは,いまでもチャレンジングなことだと自負しており,2022年度の研究完成にむけわれわれはさらにこの方向性を追求する予定である
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には,2021年度に繰り越していた諸研究(本来は2020年度完了の予定であった)を完成させる予定である.研究が未完了であるため,昨年度の報告書と重なる点もあるが,2022年度に予定しているのは,次のアプローチによる研究である.(1) 2021年度内に完成できなかった「Multiplex Network上での情報のダイナミクス現象のモデル化」を推進する.このときにわれわれが注目 しているのが, (2) 「圏論」を応用した「関係性」の抽象化と理論モデル化,と (3) エンゲストロームの活動理論に基づくエージェンシーのモデル化である.この3点を研究の中心に据えて今後の研究を推進していく.さらには,研究最終年度である2022年度には,関連諸学会での成果発表も実施する予定である.ただしどの会議で発表するかは,Covid-19の社会的影響等に強く依存する.念頭においているのは,International Conference on Web and Social Media 2022, Learning@ Scale 2022, International Conference on Computational Social Sciences 2022, AIED2021, NetSci2021, Complex Networks 2022などである.さらには繰り越したことを逆にとって,これまで導入していなかった,協調学習時のセンサデータ収集と分析にも取り組む予定である.データ解析の結果は理論モデルの構築に活用することにしている.この点が昨年とは大きく異なっている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度末に予定していた国際会議への参加を研究路線の若干の修正と新型コロナウィルス感染症パンデミックにより変更したところ,2021年度の国際会議へ 参加もCOVID-19による影響で大幅に変更せざるを得ず研究そのものの繰り越しを決定した.さらに協調学習時のセンサデータの収集も2022年度に繰り越さざるを得なかった.研究を繰り越した2022年には,(1) センサデータの収集と解析,(2) Computational Social Science関係の国際会議での研究発表,ないし参加を検討中である(ただしCOVID-19の世界的拡大がどうなるか,今後の社会情勢に強く依存する).これらへの支出を2022年度へと繰り越したため未使用金額が発生した.
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