研究課題/領域番号 |
18K18654
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
石野 洋子 山口大学, 大学院技術経営研究科, 教授 (90373266)
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研究分担者 |
林 裕子 山口大学, 大学院技術経営研究科, 教授(特命) (90637456)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 技術経営 / ホライズン・スキャニング / フォーサイト |
研究実績の概要 |
本研究では,ホライズン・スキャニングとフォーサイトの2つをベースとした,技術経営(MOT: Management of Technology)の兆し教育コンテンツを形成する方法論を提案することを目的としている. H31年度は,国際的な研究動向や政府の動きをモニターし分析するホライズン・スキャニングの過程から,「QRコード決済サービスの日本における普及」を兆しとして発見し,将来の予測(フォーサイト)のひとつとして,モンテカルロ法に基づくシミュレーションを行った.具体的には,2018年12月の時点で現金支払やクレジットカード支払が主流の日本において,小規模企業(飲食店)がQRコード決済を導入すると,5年後,10年後にどの程度の利益がもたらされるのかをシミュレーションした.そして,その結果からQRコード決済の普及状況の予測を行った.以下,その概略を述べる. 政府は,キャッシュレス化を進めるための支援として,QRコードを使った決済基盤を提供する事業者に補助金を供与し,中小の小売店には決済額に応じて時限的な税制優遇を検討するとしている.そのため,シミュレーションでは,いずれの条件下でも,店側はQRコード決済を導入した方が、利益が大きいことが判明した.QRコード決済は,少なくとも短期的には,かなりの規模で普及することが見込まれる.ただし,それが一過性のものになるか,それとも長く根付くかは,QRコード決済のお得感,手軽さ,そして,付加価値の大きさ次第だと考えられる.QRコード決済を日本に定着させるためには,この決済に消費者が魅力的に感じる付加価値を付け,なるべく長くその影響を継続することが重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホライズン・スキャニングから見出した「QRコード決済サービスの日本における普及」をテーマに,モンテカルロ法に基づくシミュレーションを行った.この結果を「Study on Popularization of QR code settlement in Japan」として,国際学会のAgents and Multi-agent Systems: Technologies and Applications 2019 (13th KES International Conference, KES-AMSTA-2019)で発表した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに,ホライズン・スキャニングについては,MOTの大規模な国際学会である IAMOT やPICMETの予稿集のテキストマイニングを行い,語の共起状態の変化から研究動向の変化を調べることを行っており,一定の成果を得ている.現在は,それとは別のテーマとして,日本の地方公共団体のオープンデータへの取組を研究し,統計データの望ましい公開の在り方について,研究を進めている.また,フォーサイトの面では,中小企業におけるオムニチャネルを用いたマーケティング手法についての調査を進めている.今後は,これらの結果をとりまとめて,MOTのカリキュラムに組み込む教材の作成に取り組む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ICIM2019(2019年11月26-28日,スペイン)に出席予定だったが,家人の体調が優れず見合わせたため,次年度使用額が生じた. 2020年度は,ホライズン・スキャニングの拡張として,大規模データの解析システムを構築する.そして,これまでの研究成果をいくつかの国際学会で発表する予定なので,その旅費に使用する.
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