本研究では,技術と経営の両方の知識を持った人材養成を目的とする技術経営(MOT)の教育において,社会ニーズに応える教育内容を継続的にカリキュラムに組み込むための方法論を開発することを目的とした.提案する具体的な方法論は,ホライズン・スキャニングとフォーサイトの2つを継続的に実施・統合するものである. 実際は,次のように進める.まず,ホライズン・スキャニングとして,国際的な研究動向や政府の動きをモニターして分析し,新しい潮流や兆しを発見する.そして,発見したトピックスを研究し,国際学会で発表することで,学会参加者との議論を通じ,質的なホライズン・スキャニングを行う. H30年度は,高齢化が進む日本での新し潮流を発見するために,高齢者が頻繁に訪れるB2CのECサイトに着目した.20代から60代以上の20万人以上のパネルの1年間のウェブログデータを分析し,その結果,高齢者が他の年齢層と比較して特に関心がある製品カテゴリは健康食品であること,そして,指名買いに近い行動をしていることを明らかにした. H31(R1)年度は,QRコード決済サービスの日本における普及を兆しとして発見し,モンテカルロ法に基づくシミュレーションを行った.2018年12月の時点で現金支払やクレジットカード支払が主流の日本において,小規模企業(飲食店)がQRコード決済を導入すると,5年後,10年後にどの程度の利益がもたらされるのかをシミュレーションし,その結果からQRコード決済が急激に普及することを予測した. R2年度は,地方自治体のオープンデータへの取組をテーマに取り上げた.都道府県ごとにオープンデータ普及率(構成する市区町村がオープンデータに取り組んでいる割合)を算出して,オープンデータの取り組みに地域格差があることを明らかにした.また,自治体間の連携には3つのタイプがあることも明らかにした.
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