医学部医学科学生1年次生と同学年の心理学科学生との間で、多職種連携教育(IPE)を行い、その前後で共感力(empathy)がどのように変化するかを、学科間の比較も含めて3年間に渡って検討した。検討事項は下記である。 1)empathyの評価尺度であるJSE日本語版を用いて、IPEの前後及び両学科間でのスコアの比較を行った。2)授業時のレポートを文章解析ソフトウェアを用いて分析し、IPE前後と両学科間で比較した。 結果:1)JSEの総スコアはIPE前後でも両学科間でも差がなかった。しかし、20ある項目を比較すると、1年目には臨床心理学科で複数の項目において、IPE後で低下を認めたが、医学科ではそのような変化は見られなかった。2年目、3年目においては、臨床心理学科でもそのような変化は見られなかった。臨床心理学科1年目の学生のスコアを3年間追跡すると、IPE後に低下していたスコアは少しずつ上昇が見られた。3年間通じて項目別の比較をすると、医学科ではIPE後に低下する項目が多かったのに対し、臨床心理学科では上昇する項目が多かったことがわかった。2)授業時のレポートとしては、前期の医学概論、後期のIPEに関する講義やグループワーク、更に最終レポートや感想文を電子化したデータを用いて文章解析ソフトウェアを用いて、単頻度解析を行い、両学科で比較した。その結果、1年目は臨床心理学科で医学科に比してIPE後には医学・医療についての単語が高頻度に現れていたが、2,3年目ではそのような差はなく、両学科間でも著しい差異は認めなかった。 臨床心理学科では1年目の学生は第一期生でもあり、事前の心理学に対する期待が大きく、1年次生では医学的内容の講義が多かったために、JSEのスコアに差が出たのかもしれない。それ以降は、臨床心理学科でJSEスコアが上昇していることから、期待通りの教育がなされていると思われた。
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