研究課題/領域番号 |
18K18665
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
鳥谷 真佐子 慶應義塾大学, システムデザイン・マネジメント研究科(日吉), 特任講師 (90420819)
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研究分担者 |
阿児 雄之 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 研究員 (00401555)
野口 淳 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (70308063)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 博物館評価 / ワークショップ / 体験学習 |
研究実績の概要 |
博物館は教育,学術,文化の発展への寄与に加え,生涯学習や地域づくりの拠点としての様々な役割を求められるようになっている。こうした状況のなか,博物館は設置者-運営者-来館者以外の多様なステークホルダーとの新たな関係性構築と,各博物館のミッションに従ってステークホルダーらにどのような価値を提供できるかということをも意識した評価を行っていかなければならない。本研究では,システムデザイン・マネジメントのツールを活用し,各博物館の活動をミッションに紐付けて確認すると同時に,関係するステークホルダー間の価値循環を可視化し,両者を統合することで,各博物館が生み出す価値を評価するための評価項目作成フレームワーク作成を行った。評価項目づくりのプロセスを検討するため,大阪府弥生博物館の協力を得て,博物館を中心とした地域の価値循環や,課題の因果関係の分析を行った。また,大阪市博物館機構の運営方針・評価項目づくりの事例を調査し,評価項目を実際の運営・評価にどのように反映させていったらよいかについて検討を行った。 さらに,当評価項目作成フレームワークの有効性を確認するため,体験学習・ワークショップを,フレームワークを参考にしながら企画・評価する必要があると考え,複数の博物館関係者の協力を得て,体験学習・ワークショップの企画を行った。 これらの調査・検討結果をまとめ,博物館活動評価を作成するためのアーキテクチャフレームワークを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度,大阪府弥生博物館の現在行われている評価の方法について聞き取り調査を行うと同時に,本研究で開発中の手法の一部について,学芸員らに体験をしてもらった。また,監督組織である大阪府庁,弥生文化博物館・池上曽根遺跡関連施設の関係自治体である和泉市,泉大津市の職員らとともにステークホルダー間の価値連鎖分析および因果関係分析ワークショップを行った。その際,近隣の関連施設間の連携が促進されることで,地域の文化力の向上を図れるという可能性が見いだされた。このことから,価値連鎖や因果関係の分析から目標を見つけることで,重要かつ新たな評価項目が作成できることを確認した。しかしながら,指定管理者制度による管理を行っている場合,指定管理者が評価項目を作成するわけにはいかないということから,どのようにこのような新たな評価の考え方を導入していくことができるかについて検討した。参考のため,大阪市博物館機構の評価項目づくりについて調査を行った。大阪市博物館機構では,発足時に博物館現場の人間が運営方針作りに積極的に参加したとのことであった。指定管理者が評価項目作りに参加することは難しいかもしれないが,現場の人間も含め,ステークホルダーらが共同で評価方法を考えることは,単に管理を適切に行うという観点以上に,博物館の価値をより向上させていくために重要であろうと考えられる。 最終年度に向け,本フレームワークを活用して体験学習・ワークショップを新たに設計し,作成した評価項目を用いて評価することにより,メタ評価を行うための準備を行った。 さらに,これらの検討結果をまとめ,博物館活動評価を作成するためのアーキテクチャフレームワーク(関連要素の関係性を図で示したもの)を作成した。
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今後の研究の推進方策 |
評価項目作成フレームワークはほぼ完成したので,今後は博物館関係者らにその評価を行ってもらうことをしていく。また,フレームワークの有益性確認のために,フレームワークを用いて作出した評価項目を意識した体験学習・ワークショップを設計・実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が参加予定でいたICOM京都2019 9/1-7の旅費全額が,所属先から全額支給されたため未使用になった。未使用分は,作成したフレームワークの有益性検討に協力してもらう博物館との打ち合わせ等の旅費や謝金に使用する予定。
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