視覚情報処理には大脳の広範なネットワークが関わる。本研究では、視覚情報処理の階層構造に沿って各種評価を組み立て、個々の発達障害の認知特性を明らかにした。視機能評価は、視力・コントラスト感度・立体視・視線計測・瞳孔反応などの複数の実験で構成され、後頭葉から前頭葉におよぶ脳内ネットワークを認知神経科学的アプローチによって明らかにするものである。 2019年度は、系統的視機能評価を発達障害児童で実施し、本評価パケージで個々の発達障害の特性を適切に評価できるかどうかを検証した。その結果、新規漢字の学習につまずく背景に背側視覚情報処理過程を中心とする図形の空間認知の問題があることなどが明らかになり、系統的視機能評価の有用性を確認した。この結果は、同年日本心理学会第83回大会にて報告した。その他、学習につまずく発達障がい児童18名について同様の評価を行ない、視機能特性を保護者とともに共有し、合理的支援について議論した。拮抗的支配関係にある交感神経(散瞳)と副交感神経(縮瞳)の活動が反映される瞳孔反応については、計測に必要な課題設計を行ったうえで、健常人と自閉症スペクトラム障害の計測を行った。データの前処理(エリアシング対策)を検討し、両群の特性について、比較検討を継続した。研究期間内に分析は終了しなかったが、2020年度前半には完了し、専門学会での成果報告を考えている。
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