研究課題/領域番号 |
18K18667
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
北野 秋男 日本大学, 文理学部, 教授 (50169869)
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研究分担者 |
村山 詩帆 佐賀大学, 全学教育機構, 准教授 (30380786)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 地方学力テスト / 全国的な学力テスト / 学力テストの時期区分 / 学力テストの実施主体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本の地方学力テストの歴史と現状を解明することであるが、その際に研究の方向性として次の二つの事柄を設定した。一つ目の内容は、戦後から今日までの日本の全国的な学力テストの歴史的展開を明らかにすることであった。戦後の「ナショナル・テスト」として有名なものが1956(昭和31)年から1966(昭和41)年まで行われた「全国学力調査」であった。また、1961(昭和36)年から悉皆調査として行われた「全国中学校一斉学力調査」は通称「学テ」とも呼ばれた。さらには、2007(平成19)年度から今日まで継続されている「全国学力・学習状況調査」も挙げることが出来る。この「全国学力調査」と「全国学力・学習状況調査」に関する研究は、これまでも様々な教育学研究者が取り組んできたが、その研究視点は政治的・政策的な意図を多分に含み、おおむね批判的な研究が多かった。本研究は、主としてこの「全国学力調査」と「全国学力・学習状況調査」の各都道府県に対する影響を考察し、そのメリット・デメリットを実証的に分析することを試みた。 二つ目の内容は、全国的な学力テストの歴史的な実施状況に対比させる意味でも、戦後から今日までの各都道府県の「教育委員会」「教育研究所」「(総合)教育センター」「小・中学校長会」「教育研究会」「その他」などによって実施された「地方学力テスト」の実施状況を時期区分することである。あわせて、各時期における地方学力テストの特質や問題点も考察し、わが国の地方学力テスト体制の歴史的構造を解明した。 以上のような研究内容で行われた研究は、これまでの先行研究にはなかったものであり、本研究の独創性として位置づけることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は、おおむね良好である。とりわけ、全国の都道府県における資料の検索と収集は大きな収穫を得た。先に述べたように、本研究の目的は、日本の全国的な学力力テストと地方学力テストの実施状況を歴史的に時期区分し、その特徴や課題を解明することであった。 一つ目の課題の進捗状況は、国会図書館・国立教育研究所などでの資料検索・取集を終え、一部の地方新聞の確認以外はおおむね終了した。これまでは、こうした資料に基づいて時期区分した全国的な学力テストが、それぞれの時代において、どのような意図や方法で行われたかを確認し、時期区分された各時代における学力テストの特質を解明することを試みた。 二つ目の課題の進捗状況は、全国の県立図書館や(総合)教育センター・教育研究所を個別に訪問し、一部の地域を除いて、8割程度の資料検索・取集を終えた。これまでは、こうした資料に基づいて時期区分した全国的な学力テストが、それぞれの時代において、どのような意図や方法で行われたかを確認し、時期区分された各時代における学力テストの特質を解明することを試みた。 また、第一の課題と第二の課題の関係性の確認作業も行った。というのも、全国的な学力テストの実施は、地方学力テストの実施に多大な影響を及ぼし、テストの実施体制や問題構成にも重大な影響を及ぼすためである。また、学習指導要領の改訂も「学力」の定義や内容に大きな影響を及ぼすために、この点の変遷に関する確認作業も行った。以上のような研究内容で行われた研究は、これまでの先行研究にはなかったものであり、本研究の独創性として位置づけることができる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は、全国的な学力力テストと地方学力テストの実施状況を歴史的に時期区分し、その特徴や課題を解明するために、これまでに検索・取集した資料の分析と整理を行うことである。 たとえば、地方学力テストの第1期(昭和23~30年)の特徴は、ナショナル・テスト体制と共同歩調を取った時期であり、新教育による学力低下批判を背景としつつ、学力と教育条件に関する地方調査が実施され、「学力と教育条件」が問題となった時期である。多くの県では「学力の現状把握」を行い、「教育改善のための資料」を作成し、「調査方法の研究」「教員指導の反省・改善」に役立てるという、現在の学力調査にも通底する調査が開始された時期でもある。第2期(昭和31~41年)は、全国学力調査と共同歩調の時期であり、昭和30年代後半(1960年代)には学テの結果をもとに各県では「学力向上」を重要目標に掲げ、学力向上対策に正面から取り組む傾向が見られた。とりわけ、東北各県は学テの結果から「学力が低い県」と位置付けられ、各県ともに独自の学力向上対策を打ち出しているものの、その反対に、学テの実施に反対する「学テ闘争」が全国規模で展開され、結果として昭和41(1966)年には学テは中止に追い込まれている。 以上のような時期区分を5期に区分し、全国的な学力力テストと地方学力テストの双方で行い、その歴史的な特徴や問題点を解明することを試みる。 また、国会図書館・国立教育研究所などでは全国の地方新聞における学力テストに関する記事の検索・収集を行うこと、全国の県立図書館や(総合)教育センター・教育研究所などでの地方学力テストに関する資料検索・収集を行うことを今後の課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2020年の2月から3月にかけて実施予定であった国会図書館、並びに各都道府県図書館(特に、九州の各県)、(総合)教育センター、教育研究所などでの資料検索・取集がコロナウイルス対策のため、閉館ないしは利用不可能な状況となり、旅費・交通費の使用と複写費の使用ができなくなったことが主たる原因である。
次年度の使用計画は、九州地方と中国・四国地方の各県の県立図書館、ならびに総合教育センターでの資料収集と国立国会図書館での各都道府県における「地方新聞」に掲載された学力テストに関する新聞記事を検索し、その資料を収集することである。さらには、未だ地方学力テストの実施状況において不明な点がある都道府県(現状では山形・福島・岐阜・愛知・大阪など)でも、再度の学力テストの実施状況に関する資料調査を行う予定である。 以上の調査を終えた後は、速やかに47都道府県の県別地方学力テストの実施状況の一覧表と収集した資料・文献の一覧表を作成する予定である。また、3年間の研究成果並びに、文献一覧表については「成果報告書」を作成し、関連する研究機関や研究者に配布、もしくは学会報告を行う際の資料として提示する予定である。
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