研究課題/領域番号 |
18K18668
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
末冨 芳 日本大学, 文理学部, 教授 (40363296)
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研究分担者 |
森 直人 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10434515)
山田 哲也 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (10375214)
澤田 稔 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00367690)
知念 渉 神田外語大学, 外国語学部, 講師 (00741167)
山本 宏樹 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (20632491)
仁平 典宏 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 教授 (40422357)
武井 哲郎 立命館大学, 経済学部, 准教授 (50637056)
畠中 亨 帝京平成大学, 健康医療スポーツ学部, 助教 (70750818)
金子 良事 阪南大学, 経済学部, 准教授 (60771128)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 多様な教育機会 / フリースクール / 不登校 / 学習支援 / 学校内居場所カフェ |
研究実績の概要 |
2021年度は、コロナ禍のため文献研究や、オンライン研究会を通じ各自のケーススタディや実証調査を中心に報告・検討を実施した。 とくにコロナ禍の中では、ICT技術の活用や事業者の多様化が、多様な教育機会に大きな影響を与えている。 研究会では、教育機会確保法成立後の「フリースクールが予期していなかった行政機関の動き」として、「GIGAスクール/未来の教室」構想の進展を分析した。また、人口減少地域における学習支援事業や、高校生の探求型の活動についても、ICT活用が影響を与えている状況を整理した。民間の実践者による国内外のデモクラティックスクールの比較分析に基づき日本の多様な教育機会に必要な視点を整理した。高校内居場所実践における教育行政組織とNPOの協働の課題を整理し、多様な教育機会を学校内外のリソースとつなげようとする際のネットワーク形成の課題についても整理した。 あわせて、公教育批判の理論的支柱ともなってきた「新自由主義批判」が日本では理論として後退しつつある状況を把握し、日本は「新自由主義」であるのか、また公教育批判にとどまらず多様な教育機会に必要な理論的整理の軸をどのように作るかの検討も実施した。 これらの検討を通じて、教育と福祉の分断を超えた先にあるものを目指すこれからの学校と多様な教育機会によって成立するよりインクルーシブな公教育システムの構築に関する全体論を整理しつつある。 また一斉休校を契機とした自治体のコロナ禍後の不登校児童生徒への支援のひろがりや、オンライン授業を組み合わせた教育機会確保の動向についても重点的にケーススタディを実施し、報告書を取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の中で、海外調査や国内フィールドワークに遅れはあるが、研究機関の延期を経て、教育と福祉の分断を超えた先にあるものを目指すこれからの学校と多様な教育機会によって成立するよりインクルーシブな公教育システムの構築に関する全体論を整理しつつある。 残された論点には以下のようなものがあり、2022年度の研究活動での取り組みのポイントとなる。教育と福祉の間にジレンマがある中で、児童生徒や教員の時空間の移動、モビリティはどのように想定されるか、教育/福祉が境界付けられる両者の領域の前提を捉えなおすこと、多様な教育機会の利用メンバーの固定化(安心できる人間関係にもつながるが)、居場所支援を生活困窮者自立支援など「貧困対策」の枠組みで実施することの課題など、が現在までにあげられている。 これとは別に、2022年に国会で成立予定のこども基本法、こども家庭庁の動向などを加味し、2021年度に整理した教育や学習支援分野でのICT利用を主導する経済産業省、デジタル庁などの動向を踏まえ、多様な教育機会を取り巻く政策環境の変化を予測しながら、研究を進める必要がある。 しかしこうした状況の中でも、子ども若者自身のウェルビーイングの改善や権利・尊厳の尊重と実現は、多様な教育機会において実現されるべきであり、コロナ禍への対策も進む中で、その検証を再びフィールドワークや海外調査(もしくは関係者の訪日による研究会実施等)で進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は海外調査や国内フィールドワークの遅れを回復させつつ、多様な教育機会によって成立するよりインクルーシブな公教育システムの構築に関する全体論を整理し、理論枠組みを提示する。 また子ども若者自身のウェルビーイングの改善や権利・尊厳の尊重と実現は、多様な教育機会において実現されるべきであり、コロナ禍への対策も進む中で、その検証を再びフィールドワークや海外調査(もしくは関係者の訪日による研究会実施等)で進めていく。 残された論点である(1)教育と福祉の間にジレンマがある中で、児童生徒や教員の時空間の移動、モビリティはどのように想定されるか、(2)教育/福祉が境界付けられる両者の領域の前提を捉えなおすこと、(3)多様な教育機会の利用メンバーの固定化(安心できる人間関係にもつながるが)、(4)居場所支援を生活困窮者自立支援など「貧困対策」の枠組みで実施することの課題などについても、研究会を通じて検討を深める。 これとは別に、2022年に国会で成立予定のこども基本法、こども家庭庁の動向などを加味し、2021年度に整理した教育や学習支援分野でのICT利用を主導する経済産業省、デジタル庁などの動向を踏まえ、多様な教育機会を取り巻く政策環境の変化を予測しながら、研究を進めていく。 年度末に研究会を大規模なシンポジウムとして開催するなどし、研究成果の還元と発信を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による海外調査、国内フィールドワーク等の遅れにより、次年度使用額が発生している。 今年度は国内調査および海外調査での執行を予定している。また研究成果の発信のために、国内外の研究者や多様な教育機会の関係者向けのオンラインイベントを開催し、予算執行をする計画である。
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