研究課題/領域番号 |
18K18671
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
鈴木 将史 創価大学, 教育学部, 教授 (50216438)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 江戸期の算術教育 / 遊歴算家 / 至誠賛化流 / 作題による学習 |
研究実績の概要 |
平成30年度は本研究の初年度であったため、文献と情報の収集に努めた。 文献の収集としては、①江戸時代における和算研究の内容を示す文献、②和算の日本国内への伝播・普及状況を示す文献、③江戸時代の国内における算術教育の状況を示す文献、④和算を学校教育に取り入れる提案・実践について述べた文献をそれぞれ数冊ずつ収集した。結果として、それぞれの項目について、①関孝和に代表される関流と呼ばれる最先端の数学研究に携わる流派のほか、地方に多くの流派が存在して道場や塾を開いていたこと、②遊歴算家と呼ばれる算術研究家が日本中を回りながら算術を普及させていったこと、③算術の初級課程を終えると、互いに出題・解答しあいながらレベルを上げていった塾があったこと、④小中学校において和算を取り入れた授業実践が数多くあることがわかった。 情報の収集としては、四日市大学関孝和研究所の小川束教授のもとを訪ね、和算道場の教育を現代の算数・数学教育に取り入れるというアイデアについて意見交換するとともに、算術教育についての情報提供を求めたところ、至誠賛化流という流派が千葉県にあったこと、またその流派が毎年『淇澳集』と呼ばれる年次報告を出版していたことを知ることができた。至誠賛化流については東北大学にデジタルコレクションがあるほか、すでに多くの論考が出されているので、本研究の問題意識にしたがって分析を加えていくつもりである。 初年度は1回しか研究出張ができなかったが、2年目はより多くの情報を求めて出かけていくほか、新たな教育課程の提案を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記した研究計画において、平成30年度の計画は(1)算術道場の記録集め(2)和算を記録した書籍からの情報収集(3)教育課程の整理(4)「関孝和数学研究所」での議論となっている。 「研究実績の概要」にも述べたように、(1)については、和算関連の書籍から多くの情報を集めたほか、具体的事例として小川教授から至誠賛化流の詳しい情報を得ることができた。(2)については、20冊以上に及ぶ和算関連の書籍を購入し、多くの情報を得ることができた。(3)についても、寺子屋に始まる算術教育の課程をある程度知ることができたが、これについては多くの流派を今後も調べる必要がある。(4)については関講和研究所を訪ね、研究内容について多くの議論をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年目以降の計画は、(1)さらなる情報収集の継続と「作題活動」の考察(2)江戸の数学教育の体系化及び現代の算数・数学教育との比較(3)新しい教育課程の考案(4)外部機関での意見交換や研究の発表となっている。 多くの書籍を見ても、和算の問題は数え切れないほど紹介されているが、「作題活動」の現実についてはあまり記述がない。現代の啓蒙書だけでは限界があると感じるので、上記至誠賛化流の年次報告原本をはじめ、多くの流派の原典から教育活動の実際を汲み取る研究活動が必要である。道場や塾の跡地に足を運ぶだけでなく、デジタルアーカイブズを積極的に求めていくことで、当時の状況を明らかにしていきたい。 今年度はそのような方法で多くの流派の教育活動を集めることに注力し、その後それらの体系化、現代の教育課程との比較へと進んでいきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
業務多忙で出張が1回しかできなかったため、旅費の支出が予定よりも少なかった。 また、整理すべき情報も多くなかったため、人件費も活用する場面がなかった。 次年度は積極的に全国に足を伸ばし、情報収集に努めたい。
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