研究課題/領域番号 |
18K18672
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研究機関 | 東京未来大学 |
研究代表者 |
日向野 智子 東京未来大学, こども心理学部, 准教授 (20460040)
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研究分担者 |
磯 友輝子 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 准教授 (00432435)
藤後 悦子 東京未来大学, こども心理学部, 教授 (40460307)
角山 剛 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 教授 (60160991)
高橋 一公 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 教授 (60319093)
山極 和佳 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 准教授 (90350446)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 潜在保育士 / 現職保育士 / 就労促進 / 職場の人間関係 / ソーシャルスキルトレーニング |
研究実績の概要 |
当該年度における大きな成果は、九州地方の現職保育士を対象に、2019年10月に実施した「保育士のためのコミュニケーションを体験して考える講座」の実施である。職場の人間関係は保育士のストレスを引き起こし、離職をもたらす大きな要因の一つであることから、保育士同士の良好な関係性を促す効果的な方法を探る必要がある。そこで、自己の理解を深めるゲーム、非言語コミュニケーションと感情の統制に関するアサーションのゲーム、関係葛藤と課題葛藤を引き起こすグループワークから成るトレーニング・プログラムを構成し、現職保育士25名を対象に、ソーシャルスキル・トレーニング(SST)の効果を検討した。 主たる結果として、ENDE2(堀毛,1994)の下位尺度である記号化スキル(t(22)=3.53, p<.01)と統制スキル(t(22)=2.53, p<.05)がSST前(Ms=3.33,3.81)よりもSST後(Ms=3.58,3.99)に有意に高くなった。記号化・解読スキルについては職位や年齢との関連がみられるが、統制スキルは同関連がみられず経験によるスキル獲得が難しいこと等も示唆された。また、同講座は1日と短時間であり、令和元年度計画におけるSSTの短期的効果としてこのようなSSTは、短時間でも効果を得られることが示唆されて入り、SSTの短期的効果をある程度検証できたと考えられる。 他に論文3本、学会発表4本を行った。いずれも、保育士の職場の人間関係に関する内容であり、次年度以降の研究計画に役立てていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
対面によるコミュニケーションスキルトレーニングを計画しているが、新型コロナウイルスの影響により、トレーニングの実施時期の目途が立たずにいる。同トレーニングは、2者から集団での実施であるため、避けるべき3密のうち、密集と密接の状況が不可欠であるためである。 感染防止のためにソーシャルディスタンスをとるよう求められているが、コミュニケーションにおける物理的距離は心理的距離につながるため、距離をとってのコミュニケーションワークは、通常のワークよりも不自然な状況を生む。また、言語的なコミュニケーションだけでなく、口元を含めた顔全体の表情などの非言語的コミュニケーションは特に重要であるが、マスク着用の下では、非言語的コミュニケーションが制限され、円滑なコミュニケーションの体験はより一層難しくなる。感染防止のためにも対面による集団コミュニケーションスキルトレーニングの実施は見合わせるべきであり、今後の動向を注視しつつ、計画の変更を含めた検討を要している。 また、国際心理学会(ICP:International Congress of Psychology2020)においてAbstractが受理され発表が認められたが、コロナ禍により同大会が延期された。
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今後の研究の推進方策 |
令和元(2019)年度に現職保育士を対象に行った「コミュニケーションを体験して考える講座」において構成したソーシャルスキル・トレーニング(SST)・プログラムの短期的効果検証を進めるとともに、同トレーニング・プログラムをもとに、潜在保育士のソーシャルスキル・トレーニングに必要な要素を検討する。 最終年度にあたる令和2年度の計画では、潜在保育士および保育士養成校に在学中の保育職就職直前にあたる学生を対象にSSTを行う予定であった。しかし、コロナ禍の状況次第では、対面によるSSTの実施は難しいため、計画の変更を余儀なくされることも考えられうる。しかし、マスクを着用したコミュニケーションが主流になりつつある保育現場において、マスクの着用時のコミュニケーションがコミュニケーションにどのように影響するのか、あえてマスクを着用してのSSTの実施も現実的なプログラムであろう。いずれにせよ、コロナ禍が一定の落ち着きを見せなければ対面によるSSTは実施できず、計画通りの研究実施は難しい。コロナ禍が落ち着いた折には、潜在保育士ならびに保育士養成校の学生を対象にSSTを行い、トレーニングの短期的・長期的効果の測定・検証を行う。最終的には、コミュニケーション能力の向上がワーク・モチベーションを高めるというポジティブな効果を示し、保育士就労意欲を促進するか、実際の就労に結びつくか、最終的に仮説モデルの検証を含めて、潜在保育士の保育職就労に対する効果的な社会的スキル・トレーニングの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた理由として3点あげられる。1点目として、必要経費の減額である。現職保育士を対象としたスキルトレーニングを実施したが、当初の計画では、トレーニング参加者に対して5000円から1万円の謝金を支払う予定であった。しかし、謝金を支払うことは問題を抱え自ら応募された研究参加者のスキルアップやトレーニングに対するモチベーションを低下させるという指摘があり、ソーシャルスキルトレーニングは「講座」とし、謝礼(図書カード500円)は、事後調査(スキル尺度への回答)への参加のみとした。このため、当初計画よりも予算執行が大幅に減少している。 2点目として、研究計画自体が遅れているうえ、コロナ禍の影響を受け、潜在保育士に対するソーシャルスキルトレーニングを実施できずにいる。そのため、予算が執行できていない。 3点目として、コロナ禍の影響により、当初予定されていた2020年7月開催の国際心理学会(ICP2020,プラハ)が延期された。同学会への大会参加費をまだ納入していなかったことから、大会への参加は受理・決定しているが、大会参加費および渡航・宿泊費が発生していない。これらの理由から大幅に助成金を残し、最終年度に臨む。
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