研究課題/領域番号 |
18K18672
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研究機関 | 東京未来大学 |
研究代表者 |
日向野 智子 東京未来大学, こども心理学部, 准教授 (20460040)
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研究分担者 |
磯 友輝子 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 教授 (00432435)
藤後 悦子 東京未来大学, こども心理学部, 教授 (40460307)
角山 剛 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 教授 (60160991)
高橋 一公 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 教授 (60319093)
山極 和佳 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 准教授 (90350446)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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キーワード | 保育現場 / 職員間のコミュニケーション / 保育施設長の個人的工夫 / 保育施設の組織的工夫 / コミュニケーションスキル |
研究実績の概要 |
2022年度は、2つの学会発表と新たな研究倫理申請の受理、論文投稿準備等を行った。 2018年度本科研(18K18672)にて、保育施設長を対象に半構造化面接を実施した結果をもとに、学会発表を2つ行った。日本応用心理学会第88回大会では、「保育現場における職員間コミュニケーションを円滑にするための工夫」との題目で、保育士間の連携やコミュケーションをよりよくするための園長個人の工夫と園全体としての組織的な工夫の特徴について発表した。KJ法による分類から、「園長の個人的工夫」では、職員間あるいは園長と職員との関係性の強化、問題対処や資質向上から、職員間の連携向上や良好なコミュニケーション目指していること、「組織的工夫」では、保育上の連携強化とチーム保育に取り組みながら、職員間の連携やコミュニケーション向上を目指していることを明らかにした。また、産業・組織心理学会第37回大会では「保育士同士の非効果的なコミュニケーション」について発表した。発話データをKHcoderにより質的に分析した結果、個々人の「主張」が良好なコミュニケーションを「難しい」ものにしていることが園長の発話データから示唆された。特に、小規模施設ほどそのような傾向が高かった。 また、2022年3月末に、スキルトレーニングに関する授業を履修している学生と同科目未履修の学生について、コミュニケーションスキルに関する継時的変化を比較する学内研究倫理申請が承認された。同研究にてスキルトレーニングを経験した学生は未経験の学生よりもコミュニケーションスキルの上昇や意識の変化が見られたのであれば、保育者として社会に出る前に、学生時点でスキルトレーニングを受けることの有効性を提言できるであろう。本研究は、2023年4月時点でデータを得始めている。 その他、学会誌に保育者の職場コミュニケーションスキル尺度開発に関する論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2022年から2023年春にかけて、新型コロナウイルス感染症がようやく落ち着いてきた。しかし、保育現場では変わらず感染症対策がなされており、スキルトレーニングのような研究協力の依頼は難しい状況が続いた。そのため、採択時に計画したスキルトレーニング実施に関する研究は大幅に遅れている。 感染症による保育士を取り巻く社会状況を考慮し、2021年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)実施事業報告書にて、当初の研究計画から、ビデオ通話システム等を利用したオンライン・トレーニングや、オンデマンド教材を利用した個人学習によるトレーニングへの変更、感染症対策に対する価値観や実態とコミュニケーション、ワーク・モチベーションとの関連に関する調査などへの研究計画変更を考えていたが、2022年度末に学生を対象としたスキルトレーニングの調査を計画したため、上記研究案は研究実施に至っていない。 新たな研究実施には至らなかったが、2022年度は実施した研究の報告を2件行った。スキルトレーニングの材料を得るべくして行った保育施設長へのインタビュー調査(本科研にて2018年度末に実施)をもとに、「保育現場における職員間コミュニケーションを円滑にするための工夫」(日本応用心理学会第88回大会)、「保育士同士の非効果的なコミュニケーション」(産業・組織心理学会第37回大会)という2つの学会発表を行った。それらの発表を得て、今後の保育現場における良好なコミュニケーションや社会的スキル、ワーク・モチベーションに関する検討において、園長などの管理職と現場の保育士との視点や感じ方の違いを踏まえた検討を要するという重要な視座を得た。
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今後の研究の推進方策 |
現在、大学生においてコミュニケーションスキル・トレーニング科目の履修生と未履修生との間でコミュニケーションスキルの継時的変化に差があるかを検討する研究を実施している。コミュニケーションスキルの測定は、トレーニング実施前の4月、トレーニング実施後の7月、トレーニング終了から3か月後の10月を予定しており、4月の測定を概ね終えている(未履修生のデータを追加中)。現職保育士の離職は、経験の浅い入職後から数年の間に多いことから、入職前にスキルトレーニングを実施し、コミュニケーションスキルを向上させられるのであれば、職場の人間関係やコミュニケーションを起因とする早期離職を防ぐ一助になるであろう。このような効果を検証するため、2023年度は調査を進めていく。 上記調査におけるコミュニケーションスキル・トレーニング科目の履修生は、通学課程の平均年齢20歳の学生であり、毎週1回計14回の授業を経験する。これに対し、通信教育課程ではさまざまな年齢層の学生が、2週連続土曜日と日曜日の週末に、計4日間12回の授業を経験する。通学課程と通信教育課程の年齢および社会経験は異なるが、週1回約4か月間の長期的トレーニングと土日4日間の短期的トレーニングの効果や持続性等の観点からもスキルトレーニングの効果を検討する。 さらに、現職および潜在保育士を対象としてオンデマンド教材を用いた短期的なスキルトレーニングの実施についても計画中であり、スキルトレーニングの効果とワーク・モチベーションとの関連がみられるか検討する予定である。 日本心理学会第87回大会にて、保育者が長く職場で働くための要件について、公募シンポジウム(オンデマンド)にエントリーし、投稿論文も執筆中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
データを分析するための統計ソフトウェアを購入した。また、学会発表2件の発表費用や旅費、印刷代等を要した。
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