研究課題/領域番号 |
18K18678
|
研究機関 | 関西外国語大学短期大学部 |
研究代表者 |
Cakir Murat 関西外国語大学短期大学部, 英米語学科, 助教 (60758176)
|
研究分担者 |
小林 貴徳 関西外国語大学短期大学部, 英米語学科, 助教 (90753666)
具 本媛 関西外国語大学, 外国語学部, 助教 (10758014)
姜 京守 関西外国語大学, 外国語学部, 准教授 (30757985)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | 難民の子ども / 学習漫画 / 防災教育 / トルコ / ボランティア / 地域住民 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、トルコにおける難民の子どもへの学習漫画による防災教育の実践に挑戦し、その効果と問題点を明らかにすることである。具体的には、「課題1:トルコにおける難民の現状と課題に関する文献研究」、「課題2:難民の子ども向けの学習漫画の開発に向けての現地調査」、「課題3:難民の子ども向けの防災教育学習漫画の実施と効果の検証.」の3つの研究について行う。平成30年度は本研究の計画通り、課題1に集中して研究を行った。具体的には、トルコに係る防災教育の概念を扱う研究群を概観し、その概念の適用範囲はどこまでなのか、また、その研究はどこまで進み、課題としているものは何かについて検討・整理した。広告書及び防災・災害教育研究を軸に、大学や公立学校、行政機関、NPOにおける防災教育に関する研究やその政策などの関連の研究を含め、幅広く文献レビューを行った。とりわけ、防災教育の変遷、学校における防災教育カリキュラム、防災教育対象などの各構成概念の定義や構成次元、測定尺度、研究方法、研究結果などについて多面的に分析した。また、以上の検討を踏まえて、各構成概念の多次元構造を整理し、先行研究の検討から残された課題を示し、本研究の調査方法を明記するために、関連分野の専門家を対象にインタビュー調査を実施した。こうした文献レビューや専門家へのインタビュー調査を通じて、難民の子どもに対する防災教育の概念モデルや測定尺度を明確にすることができた。先行研究の考察は本研究の基盤となるため、初年度に行った意義は大きい。また、先行研究の考察から明らかとなった本研究の課題をより客観性の高いものとするため、関連分野の専門家を対象としたインタビュー調査は重要な作業であった。こうした調査の成果については、平成31年度の日本学習社会学会やトルコにおける教育の良い教育実践学会全国大会において発表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は3年間の科研費研究期間の初年度である。初年度は、次年度に実施予定の質問紙調査の準備期間と位置づけ、研究を進めてきた。具体的には、第1に、文献調査の更なる考察と関連分野の専門家とのインタビュー調査を通じて、本研究の理論的位置づけや実証研究のための研究方法を明らかにすることなど、漫画作成と実施のための質問紙調査の円滑な実施に向けた準備を進めてきた。第2に、次年度におけるこの質問紙調査を実施するための事前準備として、一般の防災教育の受講生を対象として配布する質問紙の作成プロセスを進めてきた。 このように、平成30年度は、本研究の初年度に該当するため、本研究の理論的位置づけを明確すること、次年度実施予定の質問紙調査の準備の2つに集中してきた。特に、本研究の理論的位置づけや先行研究の考察や専門家インタビュー調査を通じてより難民の子どもへの防災教育の内容や方法が明確にしたこともあり、次年度実施予定の研究計画は、おおむね達成されている。また、質問紙調査の実施にあたっては、質問紙の構成、標本抽出の方法に関する慎重な検討が今後より一層必要になるものと考えられる。しかし使用予定であった旅費と人件費、物品費などは安く抑えることで残額が出てしまったが、現地での聞き取り調査などで計画していたよりも多くのデータを得ることができて、当初予定していた初年度の研究実施プロセスは、おおむね達成されたものと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
次に2年目である(令和元年の)本年度は、先行研究の考察と本研究の目的に基づいて難民の子どもを対象に質問紙調査を実施し、そこから得られたデータを分析し、仮説を検証する。その結果を踏まえて、本研究の学術的及び実務的なインプリケーションを議論して行く。さらに、本研究の限界を示しながら、今後の研究方向についても述べていきたい。具体的には、まず第1に、質問紙調査で使用する質問紙の構成については、初年度実施してきた手続きを引き続き継続的に実施することで、質問紙の精度を高めていく。以上の調査で得たデータは、統計ソフトSPSS statisticsを用いて分析を行う。 第2に、次年度はデータの収集と分析が主な作業になるが、先行研究の検討は継続的に行う。この点について、今後も持続的に実施することで、本研究の理論的・実践的示唆をより豊かなものにすることができると考える。なお、本研究では当初、難民の子どもを対象として調査の計画を予定していたが、初年度の専門家のインタビュー調査を通じて、学校に通えていない経済的に不利な状況におかれている子どもの存在も出てきているため、基本的には当初の計画通り難民の子どもを対象とした調査を実施する一方で、状況に応じて研究資源に余力があると判断される場合に限り、研究の当初の計画から少し進展させて、経済的に不利な状況におかれている子どもを対象とした調査を実施することを視野に入れて比較研究を進めていくことにしたいと考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究は、研究機関初年度に予定していた3回のうち2回しかトルコへの出張ができていない状況である。また、3名の研究分担者と初年度の3月にトルコでの現地調査に行く予定だったが、研究分担をしているメンバーの急な用務により出張ができなかった。 2019年度は、初年度の残額と今年度の使用金額を合わせて、次のように次のとおりに使用する予定である。①8月、12月、3月の計3回トルコへの出張予定であり、そのうち8月の出張は3名の研究分担者との現地調査、②研究成果を報告するため出張予定、具体的には、トルコにおけるよい教育実践学会での研究成果報告、トルコの研究協力機関への研究成果の報告と意見交換、日本国内では日本学習社会学会、日本マンガ学会での研究成果発表、筑波大学と神戸大学での防災教育に関する研修など、③質問紙調査票の作成・印刷と実施、および難民の子ども向けの漫画作成・印刷など、④研究分担者、研究協力者との研究会や打ち合わせなど、⑤その他に、随時研究の推進の面で必要になったものなどの①~⑤の内容のことや物のための使用に充てていきたいと考えている。
|