数学の記述式試験は,受験者が文字,数式,図形,グラフ等を自由に記述した解答による評価であり,それらの採点はその専門性を有している者が行っている。 数学は,教科の特性からも,評価において思考力・表現力が重視される。本来,問題を解くということは,思考過程を経ながら行うものであり,現在,実用化されている限定された形式のキーボート入力よりも,手書き(入力)の方が長けているだけでなく,広汎な能力を測ることができる。 そこで,本研究課題は,数学試験の手書きの記述式解答に関して,解答用紙によるオフライン手書き認識と,デジタルで手書きされた「デジタルインク」によるオンライン文字認識の両方のデータを収集し,採点を支援するシステムを提案することを目的とする。 本年度も昨年度に引き続き,高校生を対象にした調査で得られた数式のオンライン手書き認識による時系列解答ストロークデータの分析を行った。特に,解答変更回数,解答変更の正誤履歴,解答回数と総得点の関係性について,探索的に分析を行い,紙筆では解答の履歴が不明だが,デジタルインクでのログを活用することにより,解答の過程等が明らかになり,得点に現れない新たな能力評価の測定につながる可能性や,デジタルにおける制御の方向性が示唆される。ただし,テキストと数式が混在するモデルが未開拓のため,その部分はこれからの課題である。
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