本研究では、他者の顔などに「面影を感じる」という現象を、心理学の観点から検討してきた。本年度は特に、幼児の顔写真に、有名人の現在の面影を感じるという認知過程に焦点を当てた。具体的には、逆相関法を用いて、「有名人の面影のある幼児顔」に関する心理表象の可視化(画像化)を試みた。また、可視化された画像の分析を通して、面影を喚起する視覚情報について検討した。さらに、可視化された画像に対して、第三者による印象評価調査を行った。 逆相関法に基づいた画像選択課題を行うため、有名人の幼少期の顔ならびに幼児の平均顔を50%ずつモーフィングした顔画像(男/女児各1枚)を用意し、そこにランダムノイズパターンを付加した画像を720枚ずつ作成した。48人の実験参加者に対して、顔画像を8枚ずつ呈示し、有名人の現在の面影をもっとも感じる画像を1枚選択する課題(90試行)を課した。 参加者ごとに選択された画像群を平均化することで、「有名人の面影のある幼児顔」の画像化を行った。次に、画像選択において重視されたピクセル情報の、顔画像内での分布について画像分析を行った。その結果、男/女児顔で違いがあるものの、面影を喚起する視覚情報は、目元や口元、輪郭などに集中しており、さらに左右非対称性を持つ可能性などが示された。 さらに可視化された「面影のある顔」は、第三者から見ても有名人の面影が感じられる顔なのか、ならびに、有名人の実際の幼児期の顔には似ているかについて、第三者による印象評価調査を行った。200名の回答を集計した結果、面影度と類似度の相関は強いものではなく、それぞれ独立した評価指標である可能性などが示された。 以上の研究成果の一部は、東北心理学会第74回大会(2021.12.11-12,東北大学)において、「逆相関法を用いた「有名人の面影のある幼児顔」の可視化」という題目で発表した。
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