研究課題/領域番号 |
18K18700
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
高橋 雅延 聖心女子大学, 文学部, 教授 (10206849)
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研究分担者 |
清水 寛之 神戸学院大学, 心理学部, 教授 (30202112)
齊藤 智 京都大学, 教育学研究科, 教授 (70253242)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ステレオタイプ / 記憶 |
研究実績の概要 |
これまでの記憶の心理学的研究では、どのような記憶の仕方(すなわち記憶方略)が記憶を向上させるかという検討に重点が置かれていた。しかしながら、これらの記憶方略を使用する段階以前に、さまざまな記憶に関する固定観念(すなわちステレオタイプ)が存在している。たとえば、「高齢になると記憶力が減退する」という記憶の年齢差に関するステレオタイプや、「女性は(男性に比較して)自動車の記憶力が悪い」という記憶の性差に関するステレオタイプなどがある。 本研究では、これらのステレオタイプが効率的な記憶方略の使用に与える影響の解明を目的とした。そして、女性の若齢者(大学生)と高齢者(65歳以上)を対象に、記憶の年齢差と記憶の性差のステレオタイプに関して説明する群と、それらのステレオタイプが実証されていないことを強調してステレオタイプを除去する群、に分けた。その後、年齢差や性差が認められる課題として、自動車の写真を覚えさせた上で、記憶テストを行った。 本研究の作業仮説とは、ステレオタイプが喚起されることで、不安を感じ、(1)これが記憶課題とは無関連な思考を生みだし、(2)記憶方略の使用時に必要となる集中力(すなわちワーキングメモリ)の妨害となり、その結果、効率的な記憶方略が使用できず、記憶パフォーマンスが悪くなるという作業仮説を設定した。この作業仮説にしたがえば、(1)無関連な思考の産出を抑える抑制能力の個人差や、(2)ワーキングメモリ容量の個人差、のそれぞれに着目することで、たとえステレオタイプの喚起される事態であっても、記憶方略に及ぼす影響が異なり、得られる記憶パフォーマンスの異なることが予測された。 実験の結果、必ずしも予測通りの結果が得られたわけではなかったものの、若齢者においては、ステレオタイプを除去する教示により、(高齢者においては認められなかった)記憶成績が向上する傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
参加者のリクルートが必ずしもスムーズにいかなかったため、女性の若齢者(大学生)と高齢者を対象にした検討に留まっており、男性の若齢者と高齢者の検討を行うことができていない。そのため、予定していた学会発表等も実施できず、現在までの進捗状況は「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、女性の若齢者(大学生)と高齢者のデータを蓄積すると同時に、研究分担者2名の所属大学の男性若齢者(大学生)をリクルートし、また、シルバー人材センターを活用して男性高齢者のリクルートして、研究を進め、より説得力のある知見が得られるように努める。それと並行して、研究分担者との情報交換を強化し、学会発表等、研究成果の公表ができるように努力する。
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次年度使用額が生じた理由 |
すでに述べたように、男性の若齢者と高齢者の検討を行うことができなかったために、人件費、謝金等を使用することができなかった。また、研究の遅れから、予定していた学会発表等にも参加できず、国内・外国の旅費が十分に使用できなかった。したがって、本年度は、これらの人件費、謝金等を積極的に活用し、実験のデータの蓄積をはかると同時に、旅費を活用した学会発表等を積極的に行って、研究の遅れを取り戻す予定である。
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