研究課題
本研究では、健常者ならびに統合失調症患者に対してバウム・テストを実施して、樹木の描かれ方について健常対照群と比較し、統合失調症患者に特有の描画特徴や、描画特徴と疾患の経過・予後の関連などについて検討した。具体的には、統合失調症患者は健康者と比較して、幹や枝を一本線のみで表現したり、幹の上下端を閉じていない形で描いたりするなどの表現を用いる割合が高い傾向がみられることが明らかになっている。本研究では、さらに画像解析の手法を用いて統合失調症患者の描画を分析した。まず、ウェーブレット解析、フーリエ解析、テキスチャー解析の手法をもとにした分析を行い、次に、ファジィ推論法を用いた分析を行い、結果の解釈の妥当性についての検討を行った。これらの成果は、学会発表や論文等に発表されている。また、本研究では、統合失調症患者に対するバウム・テストにおける、描画過程に注目し、描画に特異な表現が生じる要因について検討を加えることとした。バウム・テスト実施時に対象者が行っていることは、描く木をイメージすることと、実際に描くことの二段階に大別できると考えられるが、これについての検討も行う出している。、想起した木の単純化などをしていることが考えられる。これらのことには、樹木のどのような点に注意を向けるか、どのように描けば樹木に見えるか/樹木と見なされると思うかといった、認知および社会的認知のはたらきが欠かせないと考えられる。描画パズル課題を用いてイメージ段階について検討することは、統合失調症患者のもつ認知障害や社会的認知の障害をより多くの観点から理解していくことにつながると期待される。本年度は、健常者をもとに、描画パズル課題を実施して、パズル課題の信頼性や適用可能性についての予備的研究を行った。また、これらの成果についても、学会発表や論文発表を行う予定である。
3: やや遅れている
描画パズル課題については健常者についてはある程度取得できたが、今回のコロナ禍の影響で人数が限られているのと、研究協力者の精神病院での閉鎖病棟でのデータ取得が非常に困難であったため実証研究が止まっている。これまでのデータを分析して、その成果を発表したという点ではある程度の進展があったと言えるが、データ取得が止まっており、なんとか実施できるように体制を整えたい。
データ解析については、これまでの描画データをさらに分析して、学会発表や論文発表を行う。また、実際の描画パズル課題のデータ取得について、進捗状況が遅れているので、下記のような対応をとる。 北里大学においては、医療系研究科医療心理学にてポスターを掲示し、対象者を募集する。早稲田大学においては、研究協力者が担当する講義や、他の心理学系の講義、また学内の研究対象者募集メールを通じ、対象者をさらに募集する。研究参加希望者は案内文に記載された連絡先に申し出る。研究者は研究対象者と調査実施の日程を相談して確定する。対象者と個別に借りた会議室、北里大学附属臨床心理相談センター、あるいは早稲田大学心理学実験室の1室で直接会い、書面にて研究説明を行い、研究の参加をもって同意とみなす。課題、尺度得点、および感想などについてはコード番号で管理し、氏名は記入しないし、対応表も作成しない。鶴賀病院精神科外来通院患者および入院患者のうち、DSM-5(APA,2013)において、統合失調症(統合失調症型障害、妄想性障害を含む)と診断された患者で、担当医が、研究参加が可能であると判断し、書面にて研究の同意を得られた患者。ただし、年齢は20歳以上とする。症例数が30人以上になるまで実施する予定である。また、研究の実施の具体的な方策として、北里大学病院、日本大学などのほうにも打診して、データ取得をできるだけ多方面から行うようにする。
コロナ禍により調査の調査対象者の確保や大学での緊急事態等の対応でが十分に進展せず次年度に使用額が生じてしまった。
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人間環境学研究会
巻: 18 ページ: 63-71
10.4189/shes.18.63
日本大学文理学部心理臨床センター紀要
巻: 17 ページ: 5-18
Diagrammatic Representation and Inference
巻: 11 ページ: 365-381
http://www.waseda.jp/sem-takemura/