研究課題/領域番号 |
18K18703
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
加藤 隆 関西大学, 総合情報学部, 教授 (90268318)
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研究分担者 |
向田 茂 北海道情報大学, 情報メディア学部, 教授 (70374105)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 偽記憶 / 負のテスト効果 / 記憶結合エラー / 顔 / 単語対 / 顔の第一印象 |
研究実績の概要 |
平成30年7月から10月の間に実験計画・実験刺激の作成・実験プログラムの構築を行い、11月から平成31年1月にかけて3つの実験を行った。視覚情報と言語情報の偽記憶について負のテスト効果の観点から比較検討を行うために、記憶結合エラー(学習時に提示する複数の項目の部分を新たに結合した新奇テスト項目に対する偽記憶)の実験パラダイムを共通に用いて、顔写真と単語対を使用した偽記憶実験を各1つ行った。顔の偽記憶実験は、4人のオリジナル顔から輪郭、目と眉、鼻、口をそれぞれ抽出して新たに画像合成した新奇テスト顔に対する偽記憶反応を、初期テストおよび最終テストの両方において学習時におけるオリジナル顔の提示・非提示の条件間において比較するとともに、最終テストにおける初期テストの経験の影響を新奇テスト顔の提示・非提示の条件間において比較するものであった。言葉の偽記憶実験は、学習時に提示する単語対の異なる組み合わせを再認テストにおける新奇の単語対として用い、それに対する偽記憶反応を初期テストにおける提示・非提示の条件間および新奇テスト単語対の一般性の高低による差異の観点から比較するものであった。また、顔の印象と(偽)記憶の関係を探るために、その基礎資料とするべく、顔の第一印象に影響を与えると思われる3種類の要因について画像合成による操作を行い、それぞれの効果を実験により検証した。 研究成果の発表はデータ解析が比較的容易であった印象に関する実験結果について先行して平成31年3月に行った。顔および単語対の偽記憶実験の結果については、実験計画がきわめて複雑なことからデータ整理と検証に時間を要したため、データ解析に慎重を期して次年度の研究会において発表することとした。いずれの実験についても興味深い有意な結果が統計解析により得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は初年度ということで交付決定後に実験を行える期間が後期セミスターの一回しかなかったが、幸いに十分な数の実験協力者を得ることができ、3つの実験について十分なサンプルサイズのデータを取得することができた。すべての実験について研究発表を行うにはデータ解析等の時間的余裕がなく、1つの実験についてのみ研究発表を行ったが、その他の実験についても年度内にデータ解析を終えている。これらの実験結果についても研究発表の準備をしており、解析結果から新たな実験計画に対して貴重な示唆を得ることができている。平成31年度では同規模の実験を前期と後期の2つのセミスターで実施できる見込みであり、それに向けて研究の基盤を構築できたという意味でも満足できる進捗状況であると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
言語情報の負のテスト効果に偏る現状に対して視覚情報の負のテスト効果の危険性を知らしめることが重要な課題であることから、初年度の平成30年度は共通の実験パラダイムとして利用可能な記憶結合エラーを用いて顔と単語対を使用した偽記憶に焦点を当てた。いずれも満足のいく結果が得られたことから、2年目の平成31年度は前期および後期において顔の全体処理と部分処理を反映したモーフィング合成を用いたテスト顔画像を作成し、顔の偽記憶の生成および負のテスト効果における視覚的類似性の役割について集中的に検討を行う。同時に、平成30年度に得られた実験結果については平成31年度前期において研究発表を行うものとする。平成31年度の実験結果は、前期のものについては後期中の研究発表を目指し、後期の実験結果については年度末もしくは次年度初めに研究発表を行うものとする。また、一連の実験結果について査読付き論文誌への投稿を目指し、一部については夏季に集中して執筆作業を行いたいと考えている。なお、査読付き論文誌への投稿は研究期間終了後も続ける予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究発表および資料収集のための国内出張を年度末に2件行ったが、その経費の概算に不確定要素があったため、年度末という時期的な困難さから購入申請を見送った物品(記録メディア)があった。次年度予算が確定し次第、これらを購入してデータ保存に活用したいと考えている。
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