研究課題/領域番号 |
18K18708
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 雅彦 筑波大学, 数理物質系(名誉教授), 名誉教授 (30125356)
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研究分担者 |
千吉良 直紀 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (40292073)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 有限群 / 表現論 / 頂点作用素代数 / 軌道理論 / 自己同型群 / ムーンシャイン現象 / C2有限性 / 加群 |
研究実績の概要 |
有限群の表現の新しい考察を得るために、第一段階として有限自己同型群を持つ頂点作用素代数の一般的な性質の研究および大きな単純群を自己同型群として持ちながら、構造が分かりやすい例の研究をを行った。 まず、1つ目の研究として、古典的な指標理論を頂点作用素代数の加群として実現するためには、個々の元に対する表現論が必要であるが、完全可約とC2有限性があれば、ツイスト加群として実現できることは知られている。この条件に対しては、研究代表者がC2有限性の証明を行っており、完全可約性に関しては、研究代表者がスコット氏との共同研究で完成させたので、実現できている。より広い一般ムーンシャイン予想などに関係した可換群のような群として簡単な構造を持つものに対しても、頂点作用素代数においても単純カレントと呼ばれる加群が存在し、それらの研究は表現論的にも簡単な構造を持つので、ほぼ完成のレベルに達していると言える。これらは可換な複数の元上の表現になるが、それほど大きな拡張になっているわけではない。それ故、次の段階である可換でない複数の元に対する表現論を構築するために最低必要な軌道理論の有限性を証明することが重要であり、現在研究中である。特に一番難しいC2有限性に対しては、問題が収束する可能性が見えており、論文として執筆中である。 また、第2の問題として、表現の新しい概念を与えるような重要な例を見つけることが重要である。方法として、複数のフェルミオンからなるベクトル空間から生成された頂点作用素代数の適切な部分頂点作用素代数を利用した研究を行っている。これに関係したマシュコンウエイムーンシャイン予想に対しては、熊本大学の千吉良氏と進めており、台湾での議論および、研究集会での議論など、かなり頻繁に連絡を取って進めており、順調に進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)頂点作用素代数を利用した有限群の表現論を完成させるために、最低必要な結果として、予想していた結果がほぼ完成した。即ち、自己同型群による固定空間の有限性のうち、C2有限性の問題は、ほぼ解決しており、現在論文として執筆中である。これが初年度で解決したので、研究が順調に進展していると判断している。この結果により、有限自己同型群の各共役類に対して、さらに細かい表現の組が出てくるので、現在の指標理論よりも細かい理論の存在が浮かびあがってきており、この研究が次の目標である。また、予想外の進展であるが、この結果の証明方法は群論以外にも活用できそうであり、それを発展させるために、安部氏(愛媛大学)やラム教授(中央研究院)との共同研究を現在進行中である。 (2)もう一つの問題である、表現論の新しい概念を与える例と見つけ出すための研究として行っているコンウエイムーンシャイン予想に向けた取り組みに関しても、共同研究者である千吉良氏(熊本大学)とかなりの回数会う機会を設定でき、1)で得た結果はコンウエイ群に対して利用できるので、議論も進展していおり、研究が順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)第一の問題に関しては、最近証明できた軌道理論のC2有限性の研究を発展させる。この結果は、軌道理論という有限群が自己同型群として出てくる場合での有限性であるが、安部氏(愛媛大学)やラム氏(中央研究院)が指摘しているように、新しい頂点作用素代数構成の軌道理論と並ぶ大きな方法であるコミュータント構成の場合にも使える手法を多く含んでおり、予想外であるが、この問題を当面は考えることにする。そのために、安部氏との議論を複数回予定している。また、コミュータント等やW代数の知識を増やすために、共形代数やW代数の研究集会(リオデジャネイロ)、頂点作用素代数の研究集会(成都)に参加し、頂点作用素代数研究者等と議論する予定である。 (2)第二の問題としては、引き続きコンウエイムーンシャイン予想の解決を目指す。特に、そこに出てきている超共形代数との関係を調べることに集中したい。特に、(1)で得た結果を利用できるので、それを利用して個々の要素ではなく、コンウエイ群全体の表現論と結び付ける予定である。この研究を進展させるために、引き続き、共同研究者である千吉良氏と来年度中に2,3回会って議論をする機会を設ける予定である。また、有限群関係のセミナー(6月北京大学で開催)や勉強会(東京大学)や研究集会(草津、京都)に参加し、群論関係者や代数的組み合せ論関係者と議論を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Wang 教授とTang 教授と議論するために1月末に行ったXiamen大学へ出張に関して、それを当科学研究費で負担する予定でいたが、Tang 教授からの強い依頼で、Xiamen大学の研究費での招待に変わった。また、3月中旬に行った成功大学(台南市)での研究集会参加も当科学研究費で支払う予定でいたが、中央研究院のラム教授からの依頼で、ラム教授の研究費での支払いとなった。研究が順調に進展して結果が出てきたので、来年度は北京、ドゥブロブニク、成都などで発表する機会が多く、それに繰り越した経費を利用する予定である。
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