研究実績の概要 |
今年度は特に次の計画を中心に単独研究および共同研究の活動を進めた. (I) p進Eisenstein級数の族とp進L関数, (II) 新しいEuler系の構成の探求, (III) CM体 における多変数岩澤理論や非可換岩澤理論, (VI) 非可換岩澤理論のSelmer群の関数等式 (I)に関しては, 総実代数体上のユニタリ群の場合の状況を調べつつより一般の場合に一般化するための考察を行なった. (II)に関しては, 共同研究者であるFrancesco Lemma氏とともにexplicit reciprocity lawの結果に結びつけるための幾つかの大事な可換図式の成立性を考察したり証明したりした. (II)に関しては, CM体の非可換岩澤理論 については共同研究者の原氏と共に, 非可換岩澤理論の予想としての枠組み及び非可換なArtin表現に付随するp進L関数を研究した. 特に後者に関してはp進Artin L関数の存在証明やそれに対する岩澤主予想の成立性も含み得る大きな進展があった. 現在, それらの研究の細部を詰めながら論文の執筆に取り組み始めている. (VI)に関しては, Jha氏 との共同研究で論文の最後の懸案であった代数的p進L関数の関数等式と解析的p進L関数の関数等式のcompatibilityを示し投稿していたが, 査読に応じて何度かの修正を行い論文の受理に到達した.
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は, 今年度の(I)から(IV)の共同研究を少しでも進めることがまず最初の課題である. (III)の研究ではCM体の場合のアルチン表現のp進L関数の構成を細部の議論や計算まで詰めて論文の作成を目指したい. (VI)の研究においては, 単一のモジュラー形式に関しては, Selme群の関数等式の論文を出版へと漕ぎ着けたが, 通常のSelmer群を肥田のp進変形族のSelmer群に一般化する課題があり, 引き続きこの一般化へと研究を進めたい. また, 上にあげた以外にもコロナで直接議論することができず今年度は滞ってしまった海外共同研究者との共同プロジェクトがある. 例えばBuyukboduk氏とのp進Beilinson予想に関する共同研究は本年度はコロナの状況でほとんど進められなかった. それらこの状況下で停滞してしまった共同研究もコロナの状況収束に応じて軌道に戻していきたい。
|