2020 年に Journal of Ramanujan Mathematical Societyに掲載の, Carsten Elsner,立谷洋平と共同で行った古典的なテータ関数の値の代数独立性,超越性に関する研究を,Daniel Duverneyも加えさらに発展させ,フィボナッチ数を用いた無限積の超越性および代数独立性に関する結果を発表することが出来た.この研究はテータ級数,デデキントエータ関数などモジュラー形式をふんだんに使うもので,モジュラー関数の実2次点での値の超越性にも道が開けないものかを探る研究を引き続き立谷と進めている. 期間中,Hirzebruch-Zagierの定理,すなわち,素判別式をもつ虚2次体の類数を,その判別式の絶対値である実2次無理数を連分数展開したときの周期に現れる数の交代和によって与える公式,を一般化すること,すなわちそこに現れる素数は4で割った余りが3のものであるが,これを1余る場合にも拡張し,またより一般的な類似の結果をいくらでも生み出せるような,2次体の種指標のL関数についての一般的な定理を,徳島大の水野義紀と共同で研究し,その論文が2020年の Journal of London Mathematical Societyに掲載出版された.これは実2次体のKronecker極限公式の,全整数環とは限らない整環への一般化をも与えるものであり,本研究課題と深く関係しうる研究と思われ,様々な応用も含めなお研究が進行中である. また,実2次体の caliber についての以前の研究を,3次体へと引き続き展開し,研究指導を行っている大学院生中園大雅が最終的にcaliber が1の3次体を完全に決定した.
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