研究課題/領域番号 |
18K18713
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩瀬 則夫 九州大学, 数理学研究院, 教授 (60213287)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 可微分空間 / CW複体 / 単体複体 / 可微分写像 |
研究実績の概要 |
二年目は、まず個人的には微分ホモトピー論の構築に向けて、多様体の直接の延長としての可微分CW複体の定義を与え、全てのCW複体が位相空間として、なんらかの可微分CW複体のアンダーライイングな位相空間にホモトピー同値であることを示した。さらに多面体などに可微分構造を導入した可微分多面体に対して、可微分同相写像が存在することを示している。この証明には、微分位相幾何学の重要な結果であるホイットニーの近似定理が本質的に有効であると共に、一方でこれ結果自体がホイットニーの近似定理の拡張ともなるものでもある。他方で微分ホモトピー論の立場からはさらなる一般化も見込まれる基本的な結果を与えられたと自負している。年度末までにこれらの成果を論文にまとめてインターネット上の arXiv に上げて公開しており、投稿準備もほぼ整った段階にあるが、一方で△と□を結ぶ新たな概念がこれらの比較に有効であると考え始めており、これを含める場合は若干公開時期が遅れることになる。 また、3月初めに信州大学の栗林勝彦氏と共同で開催した研究会「Building-Up Differentiable Homotopy Theory」はコロナウイルスの影響もあって大教室で行い、各人がマスクを着用して離れて座るなどの対策を取る一方で youtube を用いて動画配信も行った。その際に多くの参加者から、新しい知見を求める強い熱気が充満していることを肌で感じることができ、大変大きな収穫を得たと考えている。これにより、ヨーロッパと日本での研究をさらに加速できるとの感触を持った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果を投稿まで持っていけなかったのは残念ではあるが、とにかく年度末前には arXiv に上げることができた。さらに、本年度に開催した研究会「Building-Up Differentiable Homotopy Theory」は少人数ながら白熱した雰囲気に包まれ、非常に満足度の高いものとなった。これを継続することで今後の展開が本当に楽しみになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
現在「〇△□問題」という未解決問題が浮上してきており、どうやら〇と△□とは弱同値にしかならないものということが了解されつつある。その△と□を結ぶ概念を提出することを考えている。それは△のなす圏と□のなす圏を繋ぐあらたな圏を構築するものであり、実はそのアイデアは既に Mayer-VIetoris 完全列の存在についての議論でも現われていたものでもある。 これとは別に、可微分CW複体のループ空間が本質的に50年代の Toda の standard path space の意味を明らかにするものになると考えており、これを実行したい。その上で、Kohno の iterated integral の議論を微分ホモトピー論の枠組みで再構成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は信州大学での研究会の経費を全額支出する予定であったが、共催者の研究費の使用を優先することとなり、さらにコロナウイルスの影響もあって参加者が激減し、旅費の支出の必要性も当初見通しより激減してしまった為である。次年度は本研究課題での最終年度にあたり、総決算の意味も込めて、3回目の研究会「Building-Up Differentiable Homotopy Theory」をさらに大規模に行う予定である。
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