研究課題/領域番号 |
18K18713
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
岩瀬 則夫 九州大学, 数理学研究院, 教授 (60213287)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | Smooth CW Complex / Whitney Approximation / Partition of Unity |
研究実績の概要 |
まず2020年5月初頭までに以下の成果を得た。 球面と円盤を用いていわゆる「滑らかなCW複体」と呼ぶべき微分空間を導入し、これに対する Whitney Approximation 定理を証明した。これによりすべての「連続なCW複体」がいわゆる「滑らかなCW複体」とホモトピー同値であることが導かれる。ただしこの場合のホモトピーは連続なホモトピーである。 しかし、その後のCOVID-19と大学オンライン化への対応に追われて残念ながら研究はしばらく中断した。ただし、研究の中断する中でも、フランスのPatrick Iglesias-Zemmour氏や中国のEnxin Wu氏あるいは信州大学の栗林勝彦氏らとのオンライン勉強会に参加して再開に備えていた。 実際2021年2月初頭には5月から中断していた研究を再開し、いわゆる「滑らかなCW複体」が単位の分割を持つことを示すことができたと考えている。これらの結果は多様体に対するよく知られた同様の結果の「滑らかなCW複体」への拡張であり、理論の基本的かつ重要な成果であると考えている。実際、その基となった Whitney の近似定理は微分位相幾何学に於ける基本的かつ重要な事実であり、単位の分割もまた同様である。 今回得られた二つの結果は共に「滑らかなCW複体」の基礎をなす成果であり、実は手法も良く似ていることから、得られた時期は1年近く異なるものの、単一の論文として纏めることができた。この論文は arXiv に登録済みであるであると共に雑誌にも投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年5月初頭までは概ね順調であったが、その後のCOVID-19の蔓延に伴う大学のオンライン化への対応に追われて研究がほぼ中断した状態となってしまい、いくらかのオンライン集会への参加と講演者を募るなどで得情報収集には努めたが、回復は翌2021年2月初頭となったことがあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年2月初頭から徐々に研究の体制を回復し、現在は研究を加速しており、ほぼ一年が空白となったものの、既に大学オンライン化にも耐えうるだけの経験を蓄積済みであるため、今後支障は生じない。 さて、1950年代に Hirosi Toda は通常の「連続なCW複体」にホモトピー同値となるいわゆる「標準CW複体」を導入し、これを高次のホモトピー群の計算に有効に使ったが、この事実を微分空間の言葉で解釈することがいわゆる「滑らかなCW複体」を用いて原理的には可能になったと考えている。さらにこの観点から Toshitake Kohno の反復積分を定式化し直し、一般の「滑らかなCW複体」上への導入に至りたいと考えている。その為には経路の結合に関する小さな問題点が存在するが、Zemmourらによるreflexiveな微分空間の概念を用いれば克服可能であると考えている。 いまだ渡航などは難しい状態であるが、日本時間で真夜中に開催される国際共同研究を目指したオンライン会合にあわせて遠隔会議用のシステムを導入することを考えており、さらに年度末には大規模な研究集会の開催を信州大学の栗林勝彦氏と計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年5月からCOVID-19蔓延に伴う大学のオンライン化への対応に一日の大半を注いで集中して当たった為に研究集会への出席や発表の機会を失った。またオンラインでの集会では十分な成果は上げられず、特に海外でのオンラインの集会への参加は時差の為に真夜中になる為に見送ったことも大きい。国内の研究者の為の「ホモトピー論研究集会」には謝金の形で参画したが、特に大きな金額とはならず、新規の機材の購入も欧米との時差の問題から難しいと考えて最小限に留めた。 しかし年度が変わり、大学のオンライン化にも十分対応可能なだけの経験を積んでおり、今後は時差を問題とせずに研究を続けられると確信しており、既に4月からフランス・中国・トルコ・カナダの研究者からなる国際共同セミナーもスタートしている。この真夜中に開催されるオンラインセミナーへの参加の為に機材を購入する予定であり、一方で年度末には信州大学の栗林勝彦氏と大規模な研究集会の開催を計画している。
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備考 |
京都大学の岸本大祐氏の主催する下記の研究集会を支援した。 https://sites.google.com/view/homotopy-theory-symposium-2020/home
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