研究課題/領域番号 |
18K18715
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
赤木 剛朗 東北大学, 理学研究科, 教授 (60360202)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
|
キーワード | 非整数階微分 / 非線形問題 / 発展方程式 / 異常拡散 / 多重スケール構造 |
研究実績の概要 |
予定されていた研究課題における問題は既に大方解決されている。一方、新型コロナの影響で特に海外における十分な成果発表や関連分野の研究者との研究連絡などが未遂行の状態で残されている。また、研究課題に関しては引き続き計画の延長線上にある問題について考察を行った。特に 2019 年に Israel J. Math. 誌から発表した論文の偏微分方程式に対する応用について引き続き検討を進め、多くの問題への適用が可能であることを確認した。一方、カバーしきれない問題も確認されるようになり、特に非整数階時間微分作用素を伴う非線形拡散方程式(特に多孔質媒体方程式や Fast Diffusion 方程式などのように退化性や特異性を持ち、境界条件などによってそれらが領域内で実際に起こっているような設定について取り組む。実際、設定によっては準線形でも一様放物型になる場合があり、多くの研究ではそれらが扱われている。そのような設定では解は古典解となり、非線形拡散に特有の困難が回避されている。)や爆発項を伴うような問題(すなわちエネルギー汎関数が semiconvex にはならないケース)が典型的である。これらの問題は古典的な時間微分を伴う場合に多く研究がなされてきたが、非整数階時間微分作用素を伴う場合は、連鎖律公式や解の時間連続性の喪失が根本的な困難を引き起こしている。この研究課題の一環として、既存の研究に於いて用いられた方法をあらかた適用してみたが、問題解決の見通しは立っていない。やはり根本的な接近法の改良が必要であり、それは次の科研費課題に於いて取り組む予定である。またそれ以外にも分数冪ラプラス作用素を伴う非線形拡散方程式のエネルギー解の構成などについても取り組み、同方程式の解の漸近挙動の分析に向けた足固めを行った。この問題に関しても次の科研費課題に於いて本格的に取り組む予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
海外における研究成果の発表や関連分野の研究者との情報交換をのぞけば、課題解決にむけた作業はすでに完了している。またそこから派生する課題も複数確認されており、そのいくつかはすでに解決されている。さらに抜本的な枠組みの見直しが必要なものに関しては、多くの試行を重ねており、問題解決に向けた道筋も見え始めている。よって研究課題全体としては当初の計画異常に進展していると思われる。一方、国内外での研究発表の機会は以前制限的であり、過去2年間海外出張や海外からの研究者招聘が全くできなかったことは、この課題の未遂行事項として残っている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年から各国の入国制限や日本の再入国に関する条件が緩和され、渡航しても検疫措置のために長期間隔離される可能性は低くなってきた。そのため長らく延期となっていた海外の関連分野の研究者との研究打ち合わせや海外での研究発表、さらにこれまでに得られた成果に基づいたシリーズレクチャーなどを海外の研究機関に於いて実施する。一方、新型コロナの問題は完全に解決したとは言い難く、関連分野の研究者を海外から招聘するにあたっては未だ敷居が高い。各国や個人によっても事情が異なるため、個別に相談し、可能なケースから実現していくことを目指す。過去2年間にオンラインでの研究交流に関する技術は向上し、何か目的のはっきりしたことがらに関してはオンラインでも取り組みやすくなってきたが、ブレインストーミングや研究の初歩段階に於いてはあまり効果的とは言えない。またシリーズレクチャーは対面実施を強く要望する声もある。なるべく早い段階での正常化が望ましいが、現段階では状況の変化を見ながら対面実施が可能なものから実施していくほか無いように思われる。いずれにせよこれ以上の研究期間の延長はしない方向で、現時点でできる形で成果の発表や普及に努め、2022年度中にこの課題を完全に完結させるように取り組む。またこの課題から生まれた派生研究は、既存の取り組みのマイナーチェンジでは対応しきれないことがはっきりしており、非整数階時間微分作用素を含む発展方程式の研究を新たな段階へと引き上げる契機になると革新する。これに関してもすでに実施中の科研費課題において本格的に取り組む予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定されていた海外(University of Pavia)での関連分野の研究者との研究打ち合わせやこれまでに得られた結果に基づいたシリーズレクチャーの実施が新型コロナの影響による海外渡航に関する東北大学の方針により実施できなかった。これに関しては日本政府による検疫措置の緩和やそれに伴う東北大学の方針の見直しにより許可を得ることができたため、2022 年 4 月に前半を実施した他、6 月にも後半の実施を予定している。
|