研究課題/領域番号 |
18K18718
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
二宮 祥一 東京工業大学, 理学院, 教授 (70313377)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 確率微分方程式 / 数理ファイナンス / 高頻度データ |
研究実績の概要 |
目標で、二次の場合については、Hall基底に対応する過程、即ちd(X[i,j](t))=((Xi)d(Xj)-(Xj)d(Xi))(t)の場合に、(a)X[i,j](t)が取引の上で問題となるような議論の土台となる標準的な資産過程モデルの確立、(b)実務に於いてX[i,j](t)を用いることの有用性と可能性の検証が、まず重要となると述べた。このうちの、(a) については、資産過程が通常の確率解析の対象とならないような物を、即ち、考える確率空間の標準的な情報族についてsemi-martingale とならないようなものを考えると興味ある例となることがわかった。そのような例については Russo--Vallois の forward integral を用いることで数学的な理論が正当化できることがわかった。この例の場合に計算機によって資産確率過程を発生させてHall 基底に対応する過程の観測がを行なった。その結果は理論的検討と合致するものであり、また、通常の統計量では発見が困難であるような確率過程であることも数値的に確認することができた。さらにこの過程の分散の推定が重要となるであろうことがわかった。(b)実務のデータでこれらを確認することが重要な課題である。実際に実務データでこのアプローチを行なった場合にどのような精度で上記のHall基底に対応する過程の期待値と分散とが推定できるか、がこの方法が実務への応用においてまず問題となるからである。この部分が本研究ではまだ実現されておらず、現在、民間企業と共同してこれにあたっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
実務データの入手とその解析作業に手間取っているというのが遅延の最大の原因である。研究開始時に、市場の高頻度取引データの入手の可能性を甘く見積もっていたが、実際にはその機密性の問題から容易に入手することができなかった。Covid19の影響もあり、実際に相手側の機密が守られる場所に作業に訪れるということが容易ではなくなったことも原因である。
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今後の研究の推進方策 |
高頻度取引データの分析とそれによる実証が重要であるので、この部分を以下の様に大きく二つの方法で実行することを計画し、一部実行に移している。[方法1]当初から利用を考えていた従来の金融取引市場の各種指標と取引の高頻度データのうち、共同研究企業にアクセス可能なデータと作業環境を構築して貰い、申請者がオフィスに出向いて作業をする。[方法2]従来の金融取引市場の他に近年取引金額が非常に大きくなっている仮想通貨市場のデータを用いる。参加者が非常に多く、また多くのアルゴリズムトレードが行なわれていると考えられる市場である。従来の金融取引市場との比較が十分にされていない、取引市場が多数あり、それらの間の裁定取引の存在など、複雑な市場であるので、どの指標を考慮するべきかなどの検討課題が多いが、市場の取引方法の規格が公開されているものが多く、計算機プログラムによってデータの収集が可能となるという点で研究には好都合である。仮想通貨取引市場からデータを取得する計算機プログラムの作成という新たな作業が発生するが、この方法で得られるデータの量は非常に魅力的であるので、現在、これに取り組んでいる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid19禍により、研究作業の延期、中断が発生し予定していた市場データの取得と分析による検証を予定通り行なうことができなかったために、これを一年延長することとなった。
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