研究課題
本研究の目的は、バーチャル・リアリティ技術を用いて4次元空間を直感的に理解するための可視化方法や4次元対象物を自然に操作できるようにするためのデバイスを 開発することにある。中でも、複素2次元力学系が生成するジュリア集合を可視化することでその幾何的性質を観察し、さらに数学的に有用な予想を引き出すこと に、この研究の意義があった。また高次元空間におけるデータセットの「形」を理解するための雛形としても、本プロジェクトの重要性があると考えられる。昨年度まではコロナ禍の影響で国内・海外出張を行うことが難しく、メールや slack などでのやり取りを中心として研究を進めていた。しかし今年度は slack での議論と並行してメンバー全員が山口大学などに集合する機会に恵まれ、作業を一気に進めることができた。また、九州大学において高次元可視化に関する研究集会を開催し、Marc ten Bosch氏を招聘することもできた。前年度までに、バーチャル・リアリティを用いた4次元空間を可視化するためのデバイスである Polyvision を開発し、さらに Polyvision を用いて被験者の4次元空間認識が 向上するかを定量的に測定するための実験タスクをいくつか試験的にデザインした。このタスクは4次元空間での線分の長さや角度を問うものであったが、その予備実験においてVRの優位性が見られないという結論に至り再計画の必要性に迫られた。そこで今年度はタスクの内容を4次元空間における回転操作の操作性の比較に変更して、幾つかの異なる回転方法をVR空間で提示して予備実験を実行しその修正を行う、ということを繰り返した。
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すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
数学通信
巻: 3 ページ: 49-54