研究課題/領域番号 |
18K18725
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | プロトン / ノイズ / 分子性物質 |
研究実績の概要 |
本研究は,分子内プロトンダイナミクスと結合・連動するパイ電子系電荷ダイナミクスが顕著に発現する強相関電子系分子性物質に対して,伝導ノイズの検出と発生機構の解明,さらに外部ノイズ印加による信号伝達機構の解明と伝達信号増強を試みるものである.本年度は,対象物質群が特徴的に有するパイ電子系電荷ダイナミクスが現れる低周波数誘電率測定を行い,その結果を,国際会議で発表した,またこれらの一部の研究成果について,論文としてまとめ投稿査読中である. パイ電子系を構成するドナー分子を異なる分子で置換すると分子間プロトン結合およびパイ軌道結合のそれぞれの強度をコントロールでき,誘電応答,特に低温でのプロトン量子トンネルと結合した量子常誘電応答がドナー分子の選択により大きく変化することが明らかになった.この結果は,プロトン運動とパイ電子系の結合強度の変化により誘電応答,ノイズ発生の起源となる電荷ダイナミクスが変化することを示しており,プロトン運動-強相関パイ電子系ダイナミクスの連動が明らかになった.本結果を投稿論文にまとめているところである. また,既存のノイズ測定系の改良を行うために海外共同研究者であるゲーテ大学フランクフルト(ドイツ)のJens Mueller教授と装置改良についての議論をメール,スカイプなどで行うとともに,共同研究者がゲーテ大学を長期訪問し,予備的実験を行った.これまでの保有技術では絶縁体転移後の高電気抵抗状態におけるノイズ測定が困難であるため,この課題克服に向けた装置準備,回路設計などを行い,2020年度に実試料での実験を開始できるように準備を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では,プロトン運動と相関する伝導ノイズ測定系の改良とノイズ印加回路系の構築が2019年度に完了する予定であった.しかし,ノイズ強度の発散的増加が予想される金属絶縁体転移近傍における高電気抵抗状態では,ノイズ観測におけるS/N比の改善が必要であるがその克服技術の構築に遅れがある.現在,研究実績に記載のようにゲーテ大学フランクフルトのJens Mueller教授との共同研究の中で,この課題への対策を進めている.その中で,高電気抵抗・絶縁体状態での誘電率測定におけるノイズ抽出について実施準備を行っている.
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今後の研究の推進方策 |
3年計画の最終年度となる2020年度は,研究計画の第3段階として,プロトン運動と連動したパイ電子系で生じることが期待される非線形伝導状態におけるノイズ測定から,プロトン運動の外場制御を試みる.このために,研究計画に記した高電圧印加状態でのノイズ測定に加えて前述の誘電率測定と組み合わせたノイズ測定系の構築と強相関分子性導体での実験を行う.また,プロトン運動の直接観測に向けた非弾性中性子散乱実験,赤外分子分光実験を実施する.このような,プロトン運動状態,パイ電子ダイナミクスの観測実験と並行して,最終目的である外部ノイズ重畳による信号伝達増強の実証に向けた複数試料を並列接続した測定系での実験を実施する.すでにいくつかの成果については論文投稿,原稿作成中であるが,会議発表も含めて成果をまとめる.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費(消耗品)として予定していたノイズ測定系の構築に若干の遅れがあり,部品購入が年度内に終了しなかった.また,このため実験実施が遅くなり,予定していたヘリウム使用量が若干少額になったため次年度使用額が生じた.2020年度では早期に測定系を完成し,実験実施,データ取得を速やかに進める.
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