研究課題/領域番号 |
18K18726
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
野村 晋太郎 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90271527)
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研究分担者 |
柏谷 聡 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40356770)
佐々木 進 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (80323955)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ダイヤモンド窒素-空孔中心 / 量子シミュレータ / 量子多体系 |
研究実績の概要 |
本年度、相互作用する核スピン格子の作製法の研究、高分解能固体NMR装置を用いたバルクフッ化物を対象とした双極子相互作用の制御手法に関する研究、核スピン量子多体系の電子スピンと光を介した読み出しに関する研究を昨年度に引き続いて実施した。 研究分担者の柏谷氏との共同研究により、RFプラズマ反応炉中にて(001)および(111)ダイヤモンド表面にフッ素化表面処理し、19Fの格子構造を作製、RHEEDにより表面構造の観測を昨年度に引き続き継続して実施した。 ダイヤモンドNVスピンアンサンブルと広視野光学顕微鏡を用いた量子スピン状態の制御と状態の読み出しの手法をさらに発展させ、核スピン制御のための多重パルス法とスピンロッキング法のためのパルスシーケンス制御プログラムをそれぞれ開発し、設定条件のチューニングを行なった。波形整形されたマイクロ波パルスの照射により、高い忠実度で量子スピン状態の制御と状態の読み出しを行なった。広視野光学顕微鏡を用いた測定の場合、視野内でのマイクロ波強度分布によるパルス長のエラーがあり、多重パルス法よりもスピンロッキング法の方がこのパルス長エラーに対してより堅牢であることが示された。そこで、スピンロッキング法による研究をさらに進め、その結果、コヒーレンス時間(T1ρ)がおよそ1 ms以上に延長されることが示された。この手法によりノイズスペクトルを1 -60 MHzの範囲内で得ることに成功した。さらに、-46 dBm (25 nW)の28 MHzの微小RF信号の検出に成功した。 研究分担者の佐々木氏との共同研究により、フッ化カルシウム結晶中のスピン1/2 19FのNMR法による研究を実施した。Alternating Phase Carr-Purcell’s (APCP)多重パルス法により、コヒーレンス時間の延長が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、ダイヤモンドNVスピンアンサンブルと広視野光学顕微鏡を用いて、多重パルス法、スピンロッキング法により量子スピン状態制御と状態読み出しを実施し、スピンロッキング法によってコヒーレンス時間(T1ρ)がおよそ1 ms以上に延長されることが実証された。NVスピンアンサンブルはコヒーレンス時間が単一NVより短く、この点で高感度測定には不利であるとされていたが、この結果は、ダイヤモンドNVスピンアンサンブルを用いて多数のスピンを用いることにより高感度量子測定を目指す、私たちの手法の有効性を示すものである。さらに、フッ化カルシウム結晶中の19FのにAPCP多重パルス法を適用し、コヒーレンス時間の延長が示された。以上により、本研究は順調に進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
ダイヤモンドNVスピンアンサンブルと広視野光学顕微鏡を用いた量子スピン状態の制御と状態の読み出しの手法をさらに発展させ、核スピン制御のためのスピンロッキング法、および新規多重パルス法の開発を進める。NVスピン周りのスピンノイズ源を調べ、それを平均化することによるスピンコヒーレンス時間のさらなる延長、試料作製条件を最適化により長いスピンコヒーレンス時間を有するダイヤモンド試料の作製を行う。以上により、電子スピンを介した核スピン状態の制御と観測、量子シミュレータを核スピン格子構造上に構築する可能性を探る研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大により予定していた出張がキャンセルとなったため、研究に関わる 試料の購入、作製費に充当することを予定している。
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