研究課題/領域番号 |
18K18729
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
安東 正樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90313197)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 巨視的量子力学 / CSL理論 / 熱雑音 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、巨視的な物体も記述できるような拡張量子力学の理論を実験的に検証することである。量子力学を巨視スケールにまで拡張した理論の枠組みの一つとして、質量が存在することによって量子的性質が失われるという、重力デコヒーレンスと呼ばれる考え方が提案されている。それに対して、本研究では、CSL (Continuous Spontaneous Localization)模型と呼ばれる理論に注目し、その検証を行う。CSL模型は、巨視的な物体では「測定」という操作が量子状態に影響を与えないような理論であり、微視的な極限では通常の量子力学におけるシュレディンガー方程式に帰着し、粒子数の多い極限では測定に依存しない結果を与えるという理論である。非相対論的な質点の力学しか記述できないなど、物理学の理論としては不十分な点も多いが、現在までに数学的な矛盾は見つかっておらず、従来の量子力学を拡張する可能性を持った理論模型である。 2020年度には、真空下でタングステンワイヤーのバイオリンモード振動を測定することでCSLモデルを検証する実験研究を進めた。バイオリンモード振動を光センサで計測するセットアップ、およびそれを収める小型真空槽を製作し、200Hz付近のバイオリンモード振動の測定とパワースペクトルの推定を行った。結果として、10時間分のデータの解析からは目的とする振動モードを取り出すことはできなかったが、真空槽内でのセンサ位置の微調整機構の必要性など、課題を洗い出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
真空槽内でワイヤのバイオリンモード振動を測定する装置を設計・製作し、測定を進めた。測定の結果、目的とする振動モードを検出することができなかった。一方、課題を洗い出し、次の改善点を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
本格的な測定装置の設計と製作、測定実験を進める。そこで得られたデータを解析することで、CSL理論に対する上限値を与えることを目指す。また、より高い信号-雑音比での測定を目指し、低温下で測定を行うセットアップの検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究と課題抽出の結果を受けて、改めて測定セットアップを構築・改善する方針としたため。
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