本研究では、量子スピン液体候補物質κ-H3(Cat-EDT-TTF)2を解明するために、元素置換効果およびスピンゼーベック効果の研究を行なった。まず、3つの置換体に対して、磁気トルク・熱伝導率測定を行い、ギャップレスの量子スピン液体が元素置換による影響を受けずに安定し続けることが分かった。我々の誘電率測定の結果を踏まえると、プロトンの量子揺らぎが、この系の量子スピン液体の実現に重要な役割を果たしていると結論することができた。一方、スピンゼーベック効果は、逆スピンホール効果を利用してスピン流を抽出する必要があるが、清浄な有機試料の表面に白金やタングステンを薄く蒸着するのが難しく、失敗に終わった。
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