研究課題/領域番号 |
18K18733
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 亮 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10435951)
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研究分担者 |
小布施 秀明 北海道大学, 工学研究院, 助教 (50415121)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | PT対称性 / 量子ウォーク / 量子光学 |
研究実績の概要 |
本研究では,量子光学的な実験技術を駆使することにより光子の流出入効果の制御を実装,純粋な量子系において,厳密なPT対称性を有する開放量子系を初めて実現することを目的とする.これにより,従来の手法とは全く異なる,PT対称性を用いた革新的な量子状態制御手法,及び革新的デバイスの開発,さらには開放量子系に関する基礎物理学の発展への道を拓くことを目指す.平成30年度は,PT対称性を有するスケーラブルな量子光学系を実現するために,(1)光子の流出入過程の実装に向けた基礎的な検証実験,(2)光子の高速な時間制御に関する検討,(3)実現するPT対称な時間発展に関する理論的な検討,の3つの項目に関して研究を進めた. 項目1に関しては,まず,波長405nmの連続波レーザー光をポンプ光として,提案している非線形光学過程を用いた光子流入系を構築した.そして,増幅用のLED光(波長805nm)の強度に応じて,入力した光子レベルの微弱光(波長815nm)の増幅率が変化すること,つまり,制御可能であることを確認した.また,光子の流出過程については,市販の光学素子を工夫して用いることで実現できることを確認した. 項目2に関しては,光子の高速な時間制御系に求められる装置の性能を計算した.そして,その必要な性能を満たす高速かつ,高透過率な電気光学変調装置を選定した. 項目3に関しては,PT対称な時間発展について,具体的にどのような非エルミートなハミルトニアンを実現するか理論的に検討した.また,その実験的な実装方法についても議論を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,目標としていた,光子の流出入過程の実装に向けた基礎的な検証実験を進め,光子の流入効果については,入力した光子レベルの微弱光の増幅率が,別の光(制御光)の強度によって制御可能であることが確認できた.光子の流出過程については,市販の光学素子を工夫して用いることで実現できることが確認できた.さらに,光子の高速時間制御系についても,求められる装置性能を計算し,装置の選定を進めることができた.また,PT対称な時間発展について,具体的にどのような非エルミートなハミルトニアンを実現するか理論的に検討し,その実験的な実装方法についても議論を進めた.これらの理由により,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
まず,光子の流入過程の基礎的な検証実験について引き続き研究を進める.平成30年度は,ポンプ光に連続波レーザー光を用いたが,次年度は,ポンプ光をパルスレーザー光にして,光子の流入効果を高める予定である.同時に,平成30年度に設計,装置の選定を行った,光子の高速時間制御系を構築,上記と組み合わせることで,光子の流出入効果を持った真のPT対称な量子系の原理検証実験を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次年度使用額が生じた主な理由は,当初購入予定だった光子検出器を購入しなかったためである.平成30年度は,すでに保有している光子検出器が一時的に利用可能であったため,それを利活用した. (使用計画) 次年度のできるだけ早い時期に,光子検出器を購入する.また,当初の予定通り,光子の高速時間制御用の電気光学(EO)変調器とドライバ1式を購入する.残額については,消耗品の購入,共同研究者との議論や成果発表のための旅費等に使用する予定である.
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