研究実績の概要 |
原子価スキップ現象に由来する価数の局所的な電子自由度が巨大伝導電子系と混成したときに創発される異常物性の開拓を目的に、異常物性が見られているいくつかの物質系で解明を目指した研究を行っている。中でも最も進んだ研究が、原子価スキップ元素TlをドープしたPbTeにおける異常物性の研究である。微視的なプローブである核磁気共鳴法(NMR)による原子サイト空間分解実験を目指し、今年度わずかしか存在しないドーパントのTlサイトのNMRを広い温度域に渡って、かつドープ量を変えたいくつかの試料で行うことができた。過去のTeサイトのNMR緩和率の異常を上回る異常が検出され、Tlサイトが異常の起源となっていることを直接的に裏付けできた。また、バレンススキップ元素ではないNaなどにドーパントを変えた系においても同様の実験を行ったところ、それらには異常は観測されないことが実験的に明らかになった。ドーパントがTlのときだけ異常が起こることが明確となった。その成果を含めた一連の研究成果は、学術論文4編(うち国際会議抄録2編)、国内外の会議・研究会(24件)などで発表している。以下に上記内容に最も関連した成果を示す。[論文発表] Charge Kondo Effect induced by valence skipping dopants in Pb1-xTlxTe and Pb1-xNaxTe probed by 125Te-NMR,R, R. Horikawa, H. Mukuda et al., JPS Conf. Proc., 011126 (2020) (査読有) [国際会議] R. Horikawa, H. Mukuda et al. Strongly Correlated Electron Systems 2019, Okayama, 2019.9/23-27
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