研究課題
本研究では、電子の複数の局所自由度が巨大伝導電子系と混成したときに創発される新しい異常物性の探索を行った。特に原子価スキップ現象に由来する価数の局所自由度が巨大伝導電子系と混成したときに現れる異常物性の開拓を目指し、異常が見られている物質系およびその関連物質での微視的物性の解明を行ってきた。従来から指摘されてきた候補物質の一つPb1-xTlxTeにおいて、これまで原子価スキップする可能性のあるTlドーパントだけでなく、原子価スキップしないドーパント系などと比較することで異常の起源を調べた。原子価スキップしないNaドーパント系では、ドープ量に関わらず核磁気緩和率の異常な上昇は見られないことがわかった。さらにとりうる原子価が未解明なInドーパント系でも同様の測定を行った。特に、Inドーパントは少量ドープのときNMRスペクトルから相分離していることがわかったが、ある程度Inをドープしたときはとても均質な試料が得られ、通常の金属的な振る舞いが見えた。電子状態の揺らぎを見ることのできる核磁気緩和率の測定では、Tlドーパントのとき見られたような1/T1Tの増大が観測されなかった。これらの実験から、ドーパントがTlのときのみ核緩和の異常つまり電子状態の揺らぎが見られることがより鮮明になった。原子価スキップ元素が物性を支配する可能性のある物質をいくつか測定をしてみたが、今のところ、TlをドープしたPbTe系で見られたような異常は観測できていない。この異常は非常に希な現象であることがわかってきたが、今後も可能性のある物質群を調査していき、フォノンやスピンの自由度以外の揺らぎが巨大伝導電子系と混成したときに創発される新しい異常物性の開拓を目指していきたい。
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Journal of Physics: Conference Series
巻: in press ページ: 7 pages
Physical Review B
巻: 102 ページ: 214504/1-5
10.1103/PhysRevB.102.214504
JPS Conf. Proc.
巻: 30 ページ: 011051/1-6
10.7566/JPSCP.30.011051
巻: 30 ページ: 011126/1-5
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巻: 30 ページ: 011050/1-5
10.7566/JPSCP.30.011050