研究課題
CeSの圧力下電気伝導とホール効果について,量子臨界近傍での振る舞いを測定した結果をまとめ,国際会議SCES2019で発表した.4.8GPaの量子臨界圧力に近づくに従って電気抵抗率が低温で急激な上昇を示す現象について,ホール効果が温度依存性を示さない結果と合わせて考察し,ギャップ形成ではなく,強い電荷ゆらぎが局所的なd-fクーロン相互作用として強く働き,散乱の増大をもたらしているのではないかとの議論を行った.より低温,高圧領域への測定領域の拡大を試みたが,圧力セルへのセッティングをうまく再現することができず,さらなる進展につなげることはできなかった.他の物質への展開として,常圧でギャップをもった絶縁体であるTmTeの圧力下絶縁体金属転移について,絶縁体と金属との間の中間領域が存在することを確認した.ギャップは明らかに閉じているにもかかわらず,高圧下で強磁性秩序を伴って金属化する領域のような明瞭な金属的性質を示さない中間領域が存在する.TmをYbで置換した物質についても同様な中間領域の存在を確認することができた.中間領域では,電子が局所的に束縛された状況にあると考えられるので,この領域で,SmSで観測されているような非線形伝導現象が存在するか探索を行った.まだ電気抵抗が高く絶縁体的傾向が強い圧力1GPaで行った現在の段階では,電流を流すことによる発熱の効果が大きかったが,得られた非線形伝導の結果は,すべてを発熱だけに帰することができず,本質的要因も含んでいると考えられる.Ceモノカルコゲナイドの量子臨界現象探究のため,圧力下比熱測定用のアンビルを製作した.電気抵抗で観測されている量子臨界現象について比熱による研究を行う.
3: やや遅れている
初年度に達成したCeSの圧力下電気伝導の結果を踏まえ,それをCeSeやCeTeにも展開し,CeSについては極低温領域へと測定の幅を広げる予定であったが,圧力セルへのセッティングの再現に予想以上の時間がかかっている.TmTeの絶縁体金属転移についても,ピストンシリンダーセルを用いた圧力領域をすべて探索する計画であったが,セッティングのトラブルによって1GPaだけの測定で終わってしまった.比熱用圧力セルについても,今年度内に試行測定を行い,測定プログラムの開発まで進めたかったが,セルの製作に予想以上の時間がかかってしまった.
昨年度,高圧下比熱測定用の圧力セルを作製したので,今年度はCeS, CeSe, CeTeについて,各量子臨界圧近傍での比熱増大をターゲットにした測定を行っていく.同時に,昨年度不調に終わった電気伝導測定についても,電極付けにスポットウェルダを導入するなどの工夫をこらしたので,より確実なセッティングを行って,3He温度領域やより極低温領域での伝導性測定を行っていく.また,TmTeで期待が持たれる非線形伝導現象についても,金属領域に至るまでの各圧力で詳細な測定を行い,本質的現象なのかどうかを明らかにする.
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 10件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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