研究課題
セリウム化合物をはじめとして,様々な圧力誘起量子臨界現象の研究にも対応できるよう,交流法による圧力下比熱測定系を構築した.分担者の梅尾によって確立された圧力下比熱測定技術を本研究にも適用し,15テスラ超伝導マグネットとも組み合わせた測定が行えるようになった.測定プログラムも新たに構築し,温度に対して一定比率の温度振幅,測定周波数連続可変での自動測定が行えるようになった.Inの超伝導転移温度による評価で6.5 GPaまで加圧に成功している.約2GPaの圧力下で絶縁体金属転移を示す磁性体TmTeについて,金属への転移後に突然生じるとされていた強磁性の前兆現象が転移圧力近傍で観測される可能性を交流磁化率測定で見いだした.強磁性が出現する直前の圧力で,強磁性転移温度である15K付近に小さな磁化率上昇が見られ,また,1K以下の低温に向かって発散が起きているような結果を得た.これは,強磁性の出現が15Kに突然現れるのではなく,金属転移の出現と相関して0 Kから急上昇してくるものであることを示唆している.この重要な結果については,今後も極低温,強磁性出現後の圧力まで含めて,より詳細な測定を行っていく.本研究で対象としていたCeSについて,常圧での磁気相転移を約1mgの微小試料を使った比熱測定で詳しく調べ,2次相転移であることを確認した.CeTeでは1次転移の可能性も理論的に指摘され,実験的にもその兆候が見られることから,CeTe, CeSe, CeSと系統的に相転移の機構に違いが見られるのかどうか,今後も継続的に調べていく必要がある.本研究を通じて,タイトルに掲げた圧力誘起近藤半導体状態の明らかな実証には至っていないが,通常のセリウム金属間化合物とは異なる量子臨界現象を示す物質群について,圧力下物性測定を展開していく技術的基盤整備は着実に進展したと言ってよい.
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https://home.hiroshima-u.ac.jp/tmatsu/Matsumura/Home.html